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23特 集変化の時代を生き抜くFinTech活用46会計の世界にフィンテック登場7 会計ソフトメーカーに思いがけない黒船が現れた。これがクラウド型会計ソフトである。クラウド型会計ソフトのインパクトは大きかった。少なくとも、過去の2度の会計ソフトの規格統一の動きとは桁外れの規模で、しかも根底から仕組みが違うものであった。 クラウド型会計ソフトは、freeeやMoneyForwardなどが有名である。これらのクラウド型会計ソフトは、金融機関などの取り引きデータを取得して仕訳にするという仕組みが売りである。いわゆるフィンテックを活用した新たな会計処理方法だ。 かつて、筆者は30年以上前に次のようなことを考えた。自身で金融機関に出向き預金をおろすとき、金融機関では専門の端末のオペレータがほとんど間違えないで入出金の記録作業をしている。あのオペレータの作業が社会全体で共有化されると、社会的なコストは莫大な削減効果をもたらすに違いないと考えた。もちろん、会計事務所の記帳代行という業務にも多大な効果をもたらすとも考えた。しかしながら、これは金融機関のホストコンピューターからデータを出さない限り、通帳のデータを共有化することは不可能であると思った。 それが、なんと30年後に実現してしまった。筆者はほぼ諦めていた。ところが、思いがけない技術が登場した。APIである。この技術は筆者が30年前にあこがれた技術である。当初はスクレイピングと呼ばれる手法で金融機関にアプローチしていたのが、今日ではAPIがオープン化されている。例えるならば、こっそりと金融機関の取り引きデータを取得していたのが、堂々と取得できるようになった。 クラウド型会計ソフトのfreee(フリー)やMoneyForward(マネーフォワード)はオープン化したAPIを駆使できるようになった賜物である。これにより、クラウド型会計ソフトは金融機関の取り引きデータを自動的に取り入れ、仕訳のパターンを準備することでクラウド型会計ソフトでは預金データの入力は事実上不要となった。現在ではインストール型の弥生会計など多くの会計ソフトでも実現している。会計ソフトのデータ規格統一とまでは至ってはいないが、金融機関の取り引きデータを利用する大きな仕組みが動き出した。 このようにして、会計の世界にフィンテックが入り込むことになった。『財務維新』の開発8 『財務維新』は弊社の商品の商標である。かねてより、会計ソフトの規格の統一についてソリューションしたいと考えていた。弊社ではこれを、会計データの標準化技術と呼んでいる。これについては、特許を申請した(特許第5010749号、特許5261643号)。 この技術は、会計データの規格統一に関して中核的技術となるために、他社でも多くの技術者が挑戦した。しかし、力わざで数ソフトの標準化に成功しても、99%の会計ソフトに対応できたとは、現在のところ耳にしていない。 この技術により、筆者が悩んでいた問題も解決した。つまり、エクセルとそのマクロを駆使して、経営計画を策定する必要がなくなった。さらに、標準化した会計データの税務監査も可能となった。 もとより、会計データはすべて数字で成り立っている。この点は、ルカ・パチオーリ以来変化していない。変化しているのは、数値を生かした、加工データである。筆者は、財務データは嘘をつかないと考えている。たとえば、粉飾で棚卸資産を水増ししても、棚卸資産の回転は変則的になる。しかも、脱税という逆もまた真である。たとえ、個々の組織について差があるにせよ、変遷まで計算すると財務データは嘘をつかないと確信する。まるで、頭隠して尻隠さずの状態である。 この点が、明確になった。さらに、会計事務所の仕事の在り方に一石を投じたと考える。冒頭に会計事務所のビジネスモデルは、課税標準の算出がメインであった旨を述べた。このビジネスモデルを踏襲する限り、会計事務所は過去計算の世界に埋没せざるを得ない。憚ることなくいうならば、生産性の低い作業に埋没することになる。 似たような業種に、監査法人がある。監査法人では仕訳テストという全部監査は完了したことになっているが、実際はそうではないらしい。これも、遠因として会計ソフトのガラパゴス化があるような気がする。このため、時間不足から多くの不祥事が発生していると聞く。

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