view&vision46
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2646は次第に取り除かれ、女性の社会的地位は確実に向上しつつあります」と弁護しました。 フォーラム・デスカッションが終わり、コーヒータイムの時、日本から来た10人余りの女性が自然に輪になりますと、先に発言した方が、「日本は本当におかしい国なのよ、女性が男性の所有物のように男性の姓を名乗ることが当たり前なんですから」と言いましたので私は、「日本では明治31年に夫婦同姓を制度化するまで歴史上ただの一度も女性が男性の姓を名乗ったことはなかったわね。天下を取った源頼朝の妻は北条政子、足利義政の妻は日野富子で、女性に財産権も与えられてたし、戦国時代でも武田信玄の母は大井家の娘で大井夫人…」と言いますと、その方は、「朝顔に釣瓶取られてもらひ水、の作者の千代など姓を名乗ってないでしょ」と私の言葉を遮りましたので、「俳句は江戸時代に誕生したので、武士、公家、神主、医者以外の人は姓を名乗れなかったので、句会に参加する誰もが俳句を楽しめるよう参加者は姓を名乗らないことにしていたと聞いてるわ。江戸時代は女性だけが姓を名乗れなかったのではなく、農業、工業、商業を仕事にしている人は誰も姓を名乗れなかったのだから女性差別とは違う別の問題よ」と高橋展子大使の言葉を胸に私自分を鼓舞して言いました。 もう過ぎ去った遠い日の些細な出来事ですが忘れられません。現代史を教えない授業 先日、友人が、「地域で外国の人たちとの交流会を持っているのだけど、この間イギリスの方と話していた時、『明治の廃仏毀釈運動をあなたはどう思っていますか。またあなたの周りに何かその影響が見られますか』と突然聞かれて返事ができなかった。廃仏毀釈って言葉は知っていたけどその内容について今まで知ろうとしたこともなかったし…」と言いました。その時、半月ほど前にI大学で、ある学会後の雑談で、話がたまたま歴史に触れた時一人の方が、「先日、高校で日本史を教えている先生が、現代史を教えるのはとても難しいので現代史に入る前に年度が終るよう授業を組み立てていると言ってましたよ」と言われたことを思い出しました。 実際、今までの中学や高校の日本史の授業は古代から始まって現代史に触れずに終わる傾向がありましたので、明治以降の歴史に疎い人がいるのです。 その雑談の時、正式な商談はうまく行っていたのに、気楽に食事を共にした人間的な交流の席上、優秀な日本の商社マンの話題が乏しく、日本や自分の住んでいる地域のことを知らなさ過ぎて、そのことが仕事に影響し、商談が駄目になったことがあると聞きました。 日本人が日本のことを聞かれて答えられないのを他国の人は、この人との取引は駄目、と思うのでしょうか。 その時、今は世界史が必修で日本史は必修でないとも聞きました。日本史を全ての学生に教えないでよいと決めた方々は、環境問題、教育問題、高齢化問題、労働問題、女性問題、住宅問題、食糧問題など多くの問題を抱えている日本の将来を真剣に案じているのでしょうか。 友人が聞かれて答えられなかったと言った廃仏毀釈運動ですが、神仏分離令を出した明治政府は、あれほど激しい廃仏毀釈運動が起こるとは予測できてなかったはずです。大衆は時として広い視野を持たず、体制に流され熱狂する動きを見せる怖さを持っています。そのことを神仏分離令を出した方は忘れていたのでしょう。 6世紀に仏教が伝来すると日本固有の神の信仰と仏教信仰とを融合調和し、日本の神は仏や菩薩が衆生を救うために姿を変えたものとした神仏混淆の文化を築きました。 それは神宮寺などという名称とか、神仏分離令が出るまで例えば鶴岡八幡宮は、鶴岡八幡宮寺であったことなどでも分かります。  そして国家神道を打ち立てようとした勢力が神仏分離令を出し、廃仏毀釈運動が起こったのですが、神仏分離令を出した方の、伝統文化の大切さを知らない知識の狭小さ、事を成した時の影響への配慮の無さを省み、そのような人々が決定権を持っていたことを悲しく思います。勝者の歴史 20年余り前、オーストラリアに行って、ささやかな歴史館に入った時、展示されている歴史が白人の入植から始められていたことに驚き、原住民の方々がどうしてそのことを黙っているのか不思議に思いました。 しかし、考えてみますと日本の歴史も四世紀半ばから

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