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4046【…商業の急速な情報化…】 2018年度経済産業省による「平成29年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)」によれば、我が国のBtoCビジネスにおけるEC(Electronic Commerce、電子商取引) 化率は5.79%(前年比+7.5%)、BtoBのEC化率においては29.6%(前年比+9.0%)に上っている。注目すべきは現状のEC化率ではなくその普及の速さであり、ECが全商取引のなかで支配的なポジションを確立するのはもはや時間の問題である。 これら商業の急速な情報化に対応すべく、筆者ら本学情報関連分野の教職員有志は「FinTech」「iCAN」「IT道場」等のプロジェクトを組織し、新しい商学に必要な情報技術の調査、開発、実験に取り組んでいる。 「FinTechプロジェクト」とは、平成30年度から31年度にかけて実施している本学経済研究所の研究プロジェクトの一つであり、正式には「安全で公平な金融システムの実現に資するFinTechフレームワークの提案」という長い名前のプロジェクトである。インターネットは郵便、電話、新聞、TVなど既存のインフラストラクチャを仮想世界に取り込むことで発達してきた。しかし私達が日常生活を営む上で欠かすことのできない「通貨」についての仮想化が始まったのは、意外にも、つい最近のことである。現状では「安全な支払い」が可能な通貨は開発されたものの、それを取りまく「商習慣」の仮想化が追いついていないのが現状である。 特に「詐欺」「窃盗」などへの技術的な対策は施されておらず、仮想通貨を管理するための鍵が奪われてしまった場合は「安全」に詐欺師や窃盗団に送金が可能であり、そのコインを取り返すことは不可能であることが暗号学的に「保証」されてしまっている。本プロジェクトでは、これらの不具合を技術的に解決するためのプロトコルの開発に取り組んでいる。 つぎにiCAN(Ichikawa Community Area Network)について説明しよう。iCANとは千葉商大学LAN上で地域のコミュニケーションをサポートするための実験ネットワークである。インターネットの利点は「いつでも、どこでも、だれでも」利用できることがあげられる。言い換えると、インターネットとは「距離を忘れること」「匿名性」を前提とした通信技術である。近年のSNS(Social Network Service)は、一旦捨象した個人間の関係性をインターネット上に再構成することで急速に普及した。ここで提案するiCANは千葉商科大学ネットワーク上に「地域性」を再構築することをその目的としている。【…IT道場~鍛錬と他流試合の場~…】 急速に進む商業のIT化に対応するためには、学生一人ひとりがITについてきちんと理解し、正しい知識をもつことが重要であるとすることは自明であろう。 千葉商科大学においても豊富な情報関連のカリキュラムを展開しているが、その授業内容は「90分授業商(あきない)のための情報技術力 ~CUC-IT道場~千葉商科大学政策情報学部長/教授大矢野 潤OYANO Junプロフィール1996年 慶應義塾大学大学院理工学研究科博士後期課程 単位取得満期退学2007年 千葉商科大学政策情報学部 教授2017年 千葉商科大学政策情報学部長趣味はテニスと散歩とねこ。※イラストは政策情報学部卒業生 齋藤友貴さんによるオリジナルデザインの「ビットコインねこ」

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