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4特 集変化の時代を生き抜くFinTech活用46はじめに1 千葉商科大学創立90周年記念事業として本シンポジウムが開催され、筆者は問題提起としての講演及びシンポジウムの司会として関わる機会をいただいた。FinTechという言葉自体は新聞やテレビなどの色々な場面で見聞していると思われるが、これが企業、特に中小企業に対してどのような影響を及ぼすかについて触れる機会は必ずしも多くないと思われる。講演及びシンポジウムの参加者には、中小企業において必須のファイナンス、会計、税務に関わる関係者に登壇いただき、貴重な講演を頂くとともに、シンポジウムでも活発な議論をいただいた。本稿では、筆者の講演に加え、シンポジウムの内容も簡単ではあるが述べたいと思う。FinTech(フィンテック)とは2 シンポジウムのテーマが「変化の時代を生き抜くFinTech活用」であるため、まず、FinTechという言葉について触れておきたい。経済産業省が平成29年5月8日に公表した報告書「FinTechビジョンについて」1では、Finance(金融)とTechnology(技術)を掛け合わせた言葉としている。詳細には、あらゆるものをインターネットとつなげるIoT(Internet of Things)、膨大な情報(ビッグデータ)の処理・分析、AI(人工知能)、ブロックチェーンといった先端技術を使い、爆発的に普及したスマートフォンやタブレット端末等を通じて、これまでにない革新的な金融サービスが生み出される動きを捉えようとする言葉としている。 生活の中でも、PCやスマホから振込がネットで完結したり、支払を電子マネーで行い、残高が一定額以下となると自動でクレジットカードからチャージされたりするなど、銀行の店舗に行かずにすむことが実現している。このことから、あらゆる経済活動の裏にある「お金」のかたちや流れが変わり、信用やリスクの捉え方が変わり、それらを支える担い手が変わると報告書でも述べられている。 中小企業においても、報告書では「FinTechによるベンチャー・中小企業の経営力・生産性改革」を掲げており、会計・経理業務等のバックオフィス効率化や資金繰りの改善、成長投資へのリソースシフトにより、中小企業の収益力が劇的に向上するとしている。資金面ではインターネット・バンキングや電⼦記録債権などの動きがあるとともに、クラウドファンディングのような新しい動きも生じている。また、経理業務の自動化として、金融機関から取引データを自動取得したり、スマホやスキャナで紙の領収書を読み取り文字データに変換することにより、自動仕訳を行うといった効率化の動きもある。明るい未来の会計・税務に向けて中村 元彦NAKAMURA Motohikoプロフィール慶應義塾大学経済学部卒業、千葉商科大学大学院政策研究科博士課程単位取得退学(政策研究博士)、千葉商科大学大学院 会計ファイナンス研究科 教授、日本公認会計士協会常務理事、情報処理技術者試験委員主要著書:ITのリスク・統制・監査(同文舘出版、共著)2009年、試験研究費の会計と税務(税務研究会、共著)2015年、IT会計帳簿論(白桃書房)2018年特 集変化の時代を生き抜くFinTech活用1 経済産業省(2017) 「FinTechビジョンについて」http://www.meti.go.jp/press/2017/05/20170508001/20170508001-1.pdf,2018年7月25日千葉商科大学大学院会計ファイナンス研究科 教授

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