view&vision46
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6特 集変化の時代を生き抜くFinTech活用46用している場合、その文字が他の類似の文字に置き換えることに強い抵抗があった。技術面での標準化は、進めることが当たり前に聞こえるが、現状からの変化に対しては、実際には多くのハードルがあることが多いと考える。会計・税務の未来5 まず、最初に述べておきたいのは、会計・税務の未来は明るいということである。AIなどITの進展で仕事がなくなってしまうのではないかという不安を聞くことがあるが、ITは道具であると考え、うまく活用することが求められてくる。確かに、定型的な仕訳は自動処理が進み、手作業による仕訳の入力作業自体が減少していく方向性は確実と考える。但し、ポジティブにとらえれば経理担当者は単純作業から解放され、より経営への貢献が高い業務に従事することが可能となる。また、全てが自動処理されることは現状では難しく、例えば決算整理に当たる会計処理は専門知識を持つ者が関与することが当面は必要ではないかと考える。 単純作業が減少することにより、会計情報を活用した資金繰り、予算管理、経営分析など経営に必要な情報を提供する役割を果たすことが可能となってくる。これは、経理担当者だけではなく、税理士や公認会計士などの専門家も同様である。記帳代行のような業務は減少傾向となる反面、経営者が求める情報を作成・提出するとともに、情報をいかに読み解き、経営に役立つようにアドバイスするかという専門家としての役割が強まってくると考える。会計ソフトの機能も向上し、資金繰り、予算管理、経営分析の基本的な機能は備えていることが多いため、経理担当者や専門家は一から作成する必要はなく、会計ソフトを活用することにより基本的な業務は実施できる。 但し、会計処理の自動化が進む中で、情報の信頼性の問題がより重要になると考えている。ITの進歩により自動的に情報の信頼性が高まるものではなく、そのためには仕組み、すなわち内部統制が必要となる。特に、クラウドなどのインターネット技術を利用する場合はセキュリティの問題も意識しなければならず、この知識も必要となる。少なくとも、会計処理をチェックできる力、さらに活用する力が経理担当者や専門家に、より求められていくと考える。また、筆者は倫理観が今後より重要になってくると考えている。これは技術や内部統制だけでは不正を含めた問題に対処はできず、隙間を埋めるためには関係者がしっかりとした倫理観を保持することが重要であると考えているためである。このために、大学・大学院の教育の役割は重要である。シンポジウムについて6 講演の後に、シンポジウムが開催され、①ビッグデータの守秘義務等制約に対する工夫や課題、②業務が変わることに対する現場の抵抗、③FinTechから見た明るい将来像に関するモデレータからの共通の質問及び会場からの質問を受け、活発な議論がなされた。ここで、シンポジウムの内容に関して紙面の制約はあるが、記載したい。なお、シンポジウムの登壇者は下記の通りである。モデレータ:中村 元彦パネリスト:関谷 俊昭氏(株式会社千葉銀行経営企画部フィンテック事業化推進室副室長)岡本 浩一郎氏(弥生株式会社代表取締役社長)行本 康文氏(税理士法人行本事務所代表社員税理士)橋本 隆子(千葉商科大学副学長、経済研究所長) モデレータからの第一の質問は、ビッグデータに関して会計や金融においてどのような制約があるか、また、制約に対する工夫や今後の課題に関しての問いかけであった。これは、税理士や公認会計士であれば、守秘義務があり顧客のデータを勝手に開示することはできないし、金融機関でも同様のためである。会計に関する情報は、会社にとって重要な情報であり、AIなどビッグデータを前提とした議論において、そもそもこのような重要な情報に関して、パネリストの方々がどのような問題を感じ、どのような工夫をされているかということについての質問である。 これに対して、制約があることはパネリストの方々も認識していたが、工夫によりいかに乗り越えるかがポイントという発言が多くなされた。例えば、金融機

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