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1747特 集SDGS最前線 ペレットの購入企業にも価値がある。特別なお金を使わず、通常の調達活動の範囲で資源循環による環境負荷低減、障害者雇用に貢献ができる。海洋プラスチックゴミ問題への対策、さらに使い捨てプラスチックをやめる“脱プラスチック”への取組みとしてアピールできる。 同愛会リプラスは社会福祉法人だが、企業に置き換えてみると社会課題解決ビジネスを展開しているといえる。しかも取引先(市場関係者、ペレットの購入先)にも価値を提供しており、社会から尊敬される企業だ。近江商人の哲学「三方よし」(売り手、買い手、社会よし)にも通じる。SDGsの目標に当てはめて、情報発信してみよう4 SDGsに当てはめてみたい。まず廃棄する魚箱をペレット化し、製品に使える状態に再生しているので資源の無駄遣いがない。市場関係者は使い終わった後の魚箱への責任も果たせるので、目標12「つくる責任 つかう責任」に該当する。 サーマルリサイクルではないのでCO2排出を抑えられる。海外へインゴットを輸送するエネルギーも不要にするので、目標13「気候変動に具体的な対策を」に貢献する。 陸で捨てられ、川から海へ運ばれるプラスチックゴミによる海洋汚染が国際問題となっている。ペレット化は海洋ゴミ対策にもなり、目標14「海の豊かさを守ろう」にもつながる。もともと魚箱は適切に処理されているが、場内でのペレット化は海への流出を確実に防ぐ。同愛会リプラスに魚箱を処理してもらう市場関係者にとっては、より安心だ。 そして魚箱のペレット化作業による障害者雇用は目標10「人や国の不平等をなくそう」に当たる。 取材当時、同愛会リプラスはSDGsを意識していたり、アイコンを掲げていたりしていない(おそらく今も)。それでも社会課題解決に取り組んでいると、必ずどれかの目標に当てはまる。 SDGsの17目標には貧困、飢餓、健康・福祉、教育、平和もあって広範囲だ。SDGsを経営に取り込もうと思った企業経営者も「壮大すぎる」とためらうかもしれない。しかし“17も”目標があるので、自社の事業活動でも当てはまる目標があるはずだ。 1つでも該当したら社会に向けて発信してほしい。よくあるのが「経理理念がSDGsの目標3と一致します」という確認、もしくは「うちの会社は目標10達成に貢献します」という宣言。企業活動の目的(理念)が世界目標(SDGs)と一致していたり、SDGs達成に貢献できるビジネスを展開していたりすると気づいた瞬間、その企業は社会課題解決ビジネスをやっているといえると思う。 できるだけ発信の方法を考えて欲しい。効果的な発信をするほど、「社会解決企業」として評価されるはずだ。ある取材のとき、水処理エンジニアリング大手のメタウォーターの中村靖社長は目標6「安全な水とトイレをみんなに」のアイコンを掲げ、「国連が水処理事業を必要だと言ってくれている」と語っていた。企業が勝手に「水処理は世の中に役立つ仕事です」と言うのとは“重み”が違う。 冒頭、国際社会が「今の世界の課題は何か」を議論し、その課題解決を目標としてまとめたのがSDGsだと説明した。言い換えれば、17目標は世界中の人が「解決しよう」と決めた目標だ。目標6も、きれいで安価な水をすべての人に届ける必要があると世界が合意した。“中村社長流”に翻訳すると「全世界がメタウォーターの本業である水処理事業を大事だ」と言ってくれることになる。同社はSDGsによって自社の存在価値を力強く発信できる。中村社長は従業員のモチベーション向上、人材獲得での効果を期待し、SDGsを活用した発信を心がけている。SDGsウォッシュに気を付けよう5 話はそれるが3、4年前まで記者会見で「この製品でソリューションを提供する」というフレーズを頻繁に耳にした。ソリューションとは困り事の解決策だが、「その製品が良いのは分かるけど、本当に解決策になるの?」と思うことがあった。企業が「消費者の困り

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