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1847特 集SDGS最前線事はこれだ」と勝手に決めつけ、一方的にソリューションを押しつけている印象があった。もしくは「ソリューション」という言葉の響きが良いから使っている印象を受けた。結局、売れないソリューション製品もあったので、消費者の課題解決に役立たなかったのだろう。 いま「社会課題解決企業」というフレーズを耳にする。ソリューションであっても、社会課題解決であっても、「SDGsの目標に該当する」と語ると、説得力が生まれるのでは。もちろん、本気で課題解決に取り組んでいないと“うわべ”だけと見抜かれる。いま表面だけ取り繕った「SDGsウォッシュ」への批判が出ており、要注意だ。 取材のとき、製品紹介の資料にアイコンを付けた理由を聞くと「SDGsに貢献するから」程度の回答しかもらえないことがある。本当に残念と感じるのは「経団連がSDGsを推進しているから」というコメント。思わず「経団連のために取り組んでいるんですか?」と聞き返したくなる(聞き返す勇気はないけれど)。 数年前、気候変動問題への政策提言をしている末吉竹二郎さん(WWFジャパン会長)にインタビューした時、「なぜ、日本企業は厳しいCO2排出削減目標を掲げないのか」という話題になった。私が「ある企業は業界団体の目標に合わせてCO2削減に取り組んでいる」と話を振ると、「その企業は、海外の投資家にも業界団体の目標でやっていると説明するんですか? CO2削減に遅れて企業評価が下がっても、『業界団体の目標に従っていた』が言い訳として通用するでしょうか」と疑問を呈していた。 いまは業界団体よりも挑戦的な目標を掲げる企業が増えている。だいぶ雰囲気が変わってきた。本業でSDGsに貢献。価値を取引先と分け合う6 横道の話が長くなった。本題に戻したい。「SDGsは本業で取り組める。新しい活動を始める必要はない」と聞いたことがあると思う。 同愛会リプラスの活動を振り返ってみたい。「使い終わった魚箱をプラスチック材料のペレットに加工して売る」という本業でSDGsの目標12、13、14、10に貢献している。リサイクル業なので本業で貢献できるのは当然と言えば当然だが、ペレットを購入する企業も「調達」という日常の活動で目標12、13、14、10に貢献できる。 同愛会リプラスを企業に置き換えると、1社でSDGsへの貢献を独占していない。取引先ともSDGsへの貢献を分かち合える。こうした社会課題解決ビジネスは長続きすると思う。 いま、SDGsが知られるようになり、「SDGsに貢献したい」と思う企業が増えた。そうした企業は購買や調達といった本業でSDGsへの取組みをスタートできる。 オフィス家具メーカーのイトーキは、顧客が1脚買うごとにインドネシアの温暖化対策に資金を送るオフィスチェア「nonaチェア」を販売している。詳しく説明しないが「カーボン・オフセット」と呼ばれる手法を使い、顧客には「CO2排出ゼロ・チェア」を販売し、インドネシアには現地の泥炭湿地を保全してCO2発生を抑制するプロジェクトに資金支援する。 温暖化対策以外にも現住民の生活支援にも資金が回るため、広範囲な課題解決を目指すSDGsと親和性がある。顧客企業はイトーキからチェアを「買う」ことで間接的にインドネシアでのSDGsに貢献できる仕組みだ。 イトーキはnonaチェアを紹介したウェブサイトで「より多くのお客さまにも製品の購入、ご使用を通じてSDGsを知って参加していただけるよう(略)」と紹介している。実際、SDGsへの取組みを検討している企業からチェアへの引き合いが増えているという。イトーキはオフィスチェアを売る、顧客も購入という本業でSDGsに参加できる。社会課題起点でイノベーションを7 再び同愛会リプラスの話に戻したい。SDGsは企業にイノベーションを期待している。新しい技術を開発するというイノベーションがあるが、他に新しいサービスもあるだろう。それにビジネスモデルの革新もある。 同愛会リプラスがリサイクルに使う魚箱の粉砕装置、粉々の発泡スチロール片を溶かしてペレット化する装置とも、新しい技術ではない。同愛会リプラスが革新的なのは、魚箱を引き取ったその場でペレット化していること。ほとんどの市場、工場ではインゴット化して業者に回収してもらっている。同愛会リプラスはインゴット化工程を省略し、ペレット販売を始めた

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