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1947特 集SDGS最前線ことがイノベーションだと思っている。 先ほど同愛会リプラスの大川正夫顧問が「なぜ、日本の資源を中国に輸出するのか疑問だった。国内で循環させるべきだ」と思い、魚箱のペレット化を始めたと紹介した。海外への流出を社会課題と認識したから、その課題の解決策を考えてペレット化を思いついた。海外流出を課題と思わないままだと「魚箱はインゴット化」という常識を疑わない。もしくは「もっと高性能なインゴット化装置を開発することで、資源節約に貢献する」という発想から抜け出せない。 SDGsが登場してから「アウトサイド・イン・アプローチ」という言葉も聞かれるようになった。アウトサイド(外部)、つまり社会課題からものごとを考えることだ。課題解決が目標なので、どうしても新しいビジネスモデルを練ることになる。 従来の「インサイド・アウト・アプローチ」は製品が起点。製品をどうやって売るかを考えるから、「安くしよう」「見栄えを良くしよう」という発想からの転換が起きにくい。もしくは店頭にある商品をマネしようと思う。そして「業界最小」を訴求することが良くある。わずか1センチ、2センチメールの違いなら消費者は気づかないし、感動もしない。しかしメーカーの開発者は「業界最小」に満足し、消費者を置き去りにしたマイナーチェンジを繰り返し、本当のイノベーションに費やすリソースがそがれていく。これはインサイド・アウト・アプローチの負の連鎖と思っている。 あるNGOの方が、石炭火力をFAX機に例えていた。日本は効率を高め、少しでも無駄なく燃料の石炭を燃焼させてCO2排出を減らす技術を追求している。高効率クリーンコールと呼ばれる技術だ。おそらく世界最先端技術だろう。人口増加や経済発展に電力供給が追いつかず、石炭火力を新設する新興国に必要とされる。 対して世界的な企業、欧州など環境問題解決に熱心な国・地域は、再生可能エネルギーを上手に導入して温室効果ガス排出をゼロにする方法を考えている。石炭火力を改良し、CO2を少しずつ減らす日本の努力も立派だが、海外企業がゼロ化の技術を確立したらどうなるだろう。 通信の世界で例えると石炭火力はFAX機、排出ゼロはスマートフォンの5Gの世界だ。FAX機の開発者は少しでも画質を高めよう、通信速度を速めようという努力を積み重ねる。対して情報の送信方法を追求すると5Gの開発に余念がない。どちらが技術革新か明らかだ。 石炭火力、FAX機はインサイド・アウト・アプローチ、再生可能エネルギーの導入支援技術と5Gはアウトサイド・イン・アプローチだ。 このように社会課題解決に目を向けるとイノベーションが生まれやすくなる。それは技術に限らない。ビジネスモデルの変革もあるだろう。大げさでなくても、常識の疑うことで小さなイノベーションを見いだせる。新規取引先の獲得、優秀な人材確保8 ここまでSDGsを交えながら同愛会リプラスの話を振り返った。あらためてSDGsの取組みとして整理すると⑴企業理念、事業をSDGsに当てはめよう。「SDGsとつながる」と分かったら社会課題解決企業だ。そして発信方法を工夫してほしい。  できるだけ169のターゲットも読んで、自社と関わりの深いターゲットを見つけて欲しい。なぜならターゲットが具体的だからだ。例えば目標3「すべての人に健康と福祉」のターゲットには「2030年までに、非感染症疾患による若年死亡率を、予防や治療を通じて3分の1減少させ、精神保険及び福祉を促進する」とある。成人病予防のための健康ビジネスが必要だと読める。  他のターゲットからも具体的な技術を連想できる。そして自社の技術・事業が目標達成に使えそうだと気づく。もしくは「自社の技術・サービスを世界が必要としているのだ」とも思えてくるはずだ。⑵SDGsは本業で取り組める。1社でSDGsへの貢献を独占せず、取引先ともSDGsへの貢献を分かち合えるビジネスが望まれる。⑶社会課題に目を向けてイノベーションを起こそう。他社のモノマネではないビジネスモデルは強みになる。 (1)(2)(3)がそろうと社会課題解決企業として情報発信を強化できる。もちろん(1)だけ、(1)と(2)

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