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2047特 集SDGS最前線の組み合わせでも十分だ。 社会課題解決企業は取引先、金融機関、地域社会、学生から評価される。信頼が増して取引の継続、さらに新規顧客のチャンスが生まれる。イトーキのnonaチェアで紹介したが、SDGsに取り組みたい企業が増えており、そうした企業から「取引したい」とオファーがくる可能性がある。同愛会リプラスはリコーという大手企業と取引できた。 金融機関も評価してくれる。滋賀銀行はSDGsに賛同して社会課題解決に取り組む企業への低金利融資を始めており、水の浄化システムを開発するウイルステージ(滋賀県草津市)が第一号として融資を受けた。 メタウォーターの中村社長は社員のモチベーションや人材獲得にSDGsを活用していると紹介した。 人材獲得で印象深い成果を取材したことがある。九州のハウスメーカー、エコワークス(福岡市博多区)の小山貴史社長は環境問題への関心が高い。応募書類に環境問題解決への思いが書かれている学生と面談し、採用者を決めているほどだ。その同社は2102年、CO2排出実質ゼロの「LCCM住宅」で最上位の認証を全国で初めて取得した。 従業員70人ほどの同社が大手ハウスメーカーに先駆けて開発できた理由について、小山社長は「優秀な人材が集まっているから」と説明してくれた。「環境貢献」を前面に出し、こだわることで優秀な学生を獲得できているという。社会課題解決企業であることが学生にも共感され、地方の中小企業であっても優秀な人が入社し、競争力となっている。 社会から信頼されて取引が継続すれば、金融機関も安心して資金を貸してくれる。優秀な人材を獲得できれば、その企業は数十年と安泰だ。数年前、作家のいとうせいこうさんとパタゴニア(アウトドア用品販売)日本支社長の辻井隆行さんの対談を取材したとき、せいこうさんは「どれだけの応援者がいるかかが企業には重要。もうけているけど嫌われている会社は5年後どうなるか」と語っていた。企業経営で困り事があっても、ファンが多ければ必ず助けてくれる人(取引先)がいるはずだ。手段と目的のはき違いに注意9 冒頭に書いた「私の考える企業のSDGs活用法」をもう一度、掲載する。◎社会課題解決企業としての情報発信の強化↓◎社会からの高評価(取引先からの信頼、人材獲得など)↓◎長続きする企業に 国際連合大学の沖大幹副学長からの受け売りだが、SDGsに合わせることが目的ではない、企業を長続きさせるためにSDGsを活用するべきだ。沖副学長は「目標と手段を履き違えるな」と指摘していた。 最後に日刊工業新聞のSDGsの取組みを短く紹介したい。 日刊工業新聞はSDGsが採択された2015年9月25日付の紙面1ページを使ってSDGsを特集した。それ以来、同僚とともに事業活動や研究開発の視点からSDGsの取材、報道を続けている。企業事例を紹介する「SDGsとビジネス」を34回連載するなど、企業によるSDGsの取組みを豊富に掲載しているつもりだ。 2018年9月の国連総会、国連の呼びかけでSDGsを啓発するメディア組織「SDGs Media Compact(メディア・コンパクト)」が創設された。10カ国以上から計30社・団体以上が参加しており、日本の3社に日刊工業新聞も選ばれた。 大先輩の某公共放送のディレクターが「なんでうちじゃないの」と悔しがっていた。そのくらいメディア・コンパクトは名誉と思う。その分、これからも責任を持ってSDGsの普及に貢献したい。取材の依頼も歓迎なので、ぜひ情報をお寄せ下さい。

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