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特 集SDGS最前線2547 社会的な障壁の検証5 社会的な仮説は、持続可能な社会を推進するため、自然エネルギーの経済的便益及びSDGsが重要になるとの認識が十分に普及しておらず、そのことが障壁になっているというものである。そのように考えられる根拠として、次の二つがある。 第一の根拠は、地域主導型自然エネルギー事業の低調である。地域主導型事業とは、地域住民が資本と担い手の中心となり、地域金融機関が事業資金を融資する自然エネルギー事業のことである。図表1のとおり、ドイツでは、地域主導型に相当する自然エネルギー設備の容量は、全自然エネルギー設備容量の約10%(6.7GW)(2013年)に相当する21。一方、日本の設備容量は、全自然エネルギー設備容量の約0.2%(0.09GW)(2017年)でしかない22。 地域主導型事業は、自然エネルギー事業の収益を地域経済に資するようにするための最善の方法である。ドイツの自然エネルギー事業の付加価値モデルを日本に適用した、立命館大学のラウパッハ教授らの研究23によると、地域主導型事業は、地域外からの投資等によって運営される自然エネルギー事業よりも、多くの付加価値を地域に生み出している。これは、自然エネルギー事業が、一般的に雇用をほとんど生まず、収益の多くが事業所得となるためである。また、初期の設備投資額が大きく、運転にかかる費用が少ないため、設備投資の資金を融資する金融機関の収益も一定あり、それを域外のメガバンクから調達するのか、それとも域内の金融機関から調達するのかにより、地域の収益性も変わってくる。 第二の根拠は、多くの人々がSDGsを理解していないことである。JXTGホールディングス株式会社の調査(2017年)24によると、日本でSDGsを理解している人はわずか4.4%で、聞いたことがあるという人を含めても15.0%しかいなかった。 人々の社会参加も十分でない。同調査によると、社会活動に参加した経験者は22.5%に過ぎず、68.7%の人々が社会活動への参加が十分でないと回答している。 一方、各地で地域主導型事業が増加し、注目されている。例えば、北海道グリーンファンド(北海道)、会津電力(福島)、ほうとくエネルギー(神奈川)、しずおか未来エネルギー(静岡)、上田市民エネルギー(長野)、宝塚すみれ発電(兵庫)、徳島地域エネルギー(徳島)、村楽エナジー(岡山)等の地域主導型自然エネルギー事業の企業・団体が、全国ご当地エネルギー協会を構成している25。 また、政府は2018年6月、29自治体をSDGs未来都市に指定した26。特に長野県、横浜市(神奈川県)、北九州市(福岡県)、真庭市(岡山県)、下川町(北海道)、ニセコ町(北海道)、小国町(熊本)は、自然エネルギーを地域経済に活かすことをSDGs政策の中心に位置付けている。21 自然エネルギー財団「ドイツのエネルギー転換 10のQ&A-日本への教訓」(2017年)22 気候ネットワーク「市民・地域共同発電所全国調査報告書2016」(2017年)23 Regional economic effects of renewable energies-Comparing Germany and Japan, Jörg RAUPACH-SUMIYA , Hironao MATSUBARA, Andreas PRAHL, Astrid ARETZ, Steven SALECKI Springer Open Energy, Sustainability and Society, 3/201524 JXTG ホールディングス株式会社「社会や自身の変化に求めることに関する意識調査」(2017年9月14日)25 全国ご当地エネルギー協会ホームページ(http://communitypower.jp/)26 内閣府ホームページ(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kankyo/teian/sdgs_sentei.html)図表1 ドイツでの自然エネルギーによる発電設備の所有者の内訳(2012年)(自然エネルギー財団/アゴラエナギーヴェンデ「ドイツのエネルギー転換10のQ&A」より転載)

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