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3347特 集SDGS最前線消費者教育の充実は、個々人だけではなく社会の持続可能性に貢献するということが明記されている。つまり持続可能な世界を目指すSDGsの達成に、消費者教育は欠かせない、ということを消費者行政に携わる者として再認識したい。SDGsの実現に向けて消費生活センターが「今何をすべきか」を考えるとき、消費者教育は最優先事項といえるだろう。特に、成年年齢の引き下げが決定した今、複雑な社会を生きる若者に対する学校での消費者教育は喫緊の課題であり、その実現には市民にとって一番身近な地方消費者行政・消費生活センターの関わりが必須である。しかし、他の多くの消費生活センターと同様に教育部局との連携構築は、当センターにおいても大きな課題といえる。学校現場においても“消費者教育”への認識はまだまだ低い。現在、児童・生徒が科目横断的に学習する内容が、“消費者教育”として教育関係者に認識されていない、という課題もある。この課題の解決に「SDGs教育」という概念を取り入れることはできないか。推進法第3条第7項には「環境教育、食育、国際理解教育その他の消費生活に関連する教育に関する施策との有機的な連携」を図ることが求められており、基本方針では消費生活に関連する教育として、環境、食育、国際理解、法教育、金融、主権者、キャリアの各教育を挙げている。これらの関連教育の内容にSDGsの目標を重ねると(図1)のようになる。図1 推進法の関連教育とSDGs(筆者作成)さらに、消費者教育イメージマップ14を活用し、SDGsにリンクさせることで、SDGsを体系的に消費者教育に取り組んでいくことも可能だろう。消費者教育を行う際にSDGsのどの目標をターゲットとしているかを明確に示していくことで、各教科との関連性の理解が促進されることが期待され、SDGsが学校現場の消費者教育推進の効果を測るバロメーターとしての役割も果たしていくのではないか。教育現場においては“持続可能な社会づくりの担い手を育む”ESD15教育に取り組む学校がすでにある。文部科学省の日本ユネスコ国内委員会は「関連する様々な分野を“持続可能な社会の構築”の観点からつなげ、総合的に取り組むことが必要」としてESD教育の概念として下図を示す。文部科学省 日本ユネスコ国内委員会HPより抜粋「環境・経済・社会の発展」はSDGsの全ての目標と重なることからも、教育現場においてSDGsの理念の理解は得やすいものと考える。2017年3月に告示された改訂学習指導要領では、初めて前文が置かれ、「これからの学校には、急速な社会の変化の中で、一人ひとりの児童が自分のよさや可能性を認識できる自己肯定感を育むなど、持続可能な社会の創り手となることができるようにすることが求められる」ことが明記された(下線は筆者)。16推進法、改訂学習指導要領・ESDに共通の理念が“持続可能”であり、まさにSDGsの理念であることを広く伝えていくことこそが、消費者教育の推進を担う消費生活センターの役割であろう。消費者教育を「SDGs教育」の一環として位置づけ、“持続可能”をキーワードに教育部局と消費者行政が相互理解を深めていくことが、学校における消費者教育への理解につながるものと考える。(図2)SDGs教育ESD消費者教育図2 SDGs教育 イメージ図(筆者作成)出前授業の内容に該当する①SDGsの目標アイコン②消費者教育イメージマップの領域③ESDの分野、そして④授業そのものが学習指導要領の前文に書かれた持続可能な社会の創り手となる生徒を育てる教育であり、14 消費者庁 消費者教育イメージマップ https://www.kportal.caa.go.jp/search/pdf/imagemap.pdf15 持続可能な開発のための教育 Education for Sustainable Development   文部科学省ユネスコ国内委員会HP http://www.mext.go.jp/unesco/004/1339970.htm  http://www.esd-jpnatcom.mext.go.jp/about/index.html16 小学校学習指導要領(平成29年告示)

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