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3447特 集SDGS最前線SDGsの実現であるということ、この4点を丁寧に伝えていくことが、今後の消費者行政に携わる者の役割だろう。「SDGs教育」は、なかなか広がらない消費者教育推進の突破口となる可能性があるだけではない。SDGsを消費生活センターと教育部局、学校現場との共通理解の指標とし、消費者教育を推進することでSDGsの実現のためのボトムアップが図られることになる。最後に~消費者行政の重要性6これまで述べてきたように市民に最も身近な行政の相談窓口である消費生活センターは、従来からの重要な役割である消費生活相談に加えて、消費者教育の推進や消費者安全確保地域協議会の中心的役割を担う機関として位置づけられている。「消費生活の『現場』は地域であり、消費者に身近な地方消費者行政の充実なくして、消費者の安全・安心の確保は実現しない」(改正消費者安全法ガイドライン)とあるように、今、消費者が安全・安心に暮らすために消費生活センターが果たす役割は大きい。消費者問題が多様化・複雑化する中、消費者市民の安全・安心を確保していくためには、消費生活センターの相談体制の確保・維持は最低限の条件である。地方消費者行政の充実は、持続可能な社会の構築と一体であると考えて進めていく必要があることを確認したい。SDGs推進に積極的に取り組んできた当センターにおいても、持続可能な体制維持は、他の地方消費者行政が抱える問題と大きくは変わらない状況だ。成年年齢の引き下げや、海外からの労働者受け入れなど、消費者である市民の環境は大きく変化しようとしている。市民に最も近い相談窓口として、広く社会を俯瞰し、今後起こりうる課題を想像し、その課題に対応する長期的なビジョンを持った施策を創造していくことが、今、当センターを含めた地方消費者行政に求められている課題といえるだろう。全国に855カ所17ある消費生活センターに、持続可能な社会をめざすSDGsの視点を持った行政職員と消費生活相談員が増えることが、国連の定めた2030年の目標達成だけではなく、消費者行政の充実を図ることのできるチャンスだと考えることはできないだろうか。SDGsの17の目標は、消費生活センターの業務全体を網羅する内容になっている。18行政の規模や体制により、消費生活センターの置かれている状況は異なるが、消費者行政に携わる我々相談員がSDGsとその理念を理解することで、“すでに行っていること”“今取り組んでいるもの”をSDGsと紐づけることができる。それぞれの行政において、長期的な視野で必要な施策の目標アイコンを設定し、必要な取り組みを逆算していくことも可能だ。SDGsの目標からできることを作り出す「想像、創造」そして同じ目標を持つ人と「協働」していくことは、ネットワークの構築につながっていく。SDGsの「課題はつながっている」という普遍性・不可分性にも目を向け、社会の課題に柔軟に対応できるネットワーク構築を目指していかなければならない。消費生活センターは既存の仕組みを活かし、幅広い世代、様々なステークホルダーを対象に、様々なアプローチでSDGsを推進していくことが可能な機関である。当センターではSDGsを「ものさし」に、私たち誰もが様々な形で取り組むことができるという事例を発信してきた。蒔いたSDGsの種が芽を出し始めた今、ボトムアップ型のSDGsへの取組事例を積み重ねることで2030年の目標達成に寄与できるものと確信している。本稿で示した当センターのプロジェクト事例が、全国の消費生活センターのSDGsの取り組みと地方消費者行政活性化の一助となることを期待する。17 消費者庁 平成30年度地方消費者行政の現況調査18 2017橋口「消費生活センター発ACTION! SDGsプロジェクト~消費生活相談現場からの提言~」参考文献消費者庁 平成29年度消費者政策の実施の状況消費者庁 平成30年度地方消費者行政の現況調査消費者庁 消費者教育の推進に関する基本的な方針平成25年6月閣議決定(平成30年3月20日変更)消費者庁 改正消費者安全法の実施に係る地方消費者行政ガイドライン(平成27年3月)文部科学省 小学校学習指導要領(平成29年告示)外務省 (仮訳)持続可能な開発のための2030アジェンダ日能研教務部(2017)国連 世界の未来を変えるための17の目標)SDGs 2030年までのゴール 日能研

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