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3547特 集SDGS最前線SDGs策定に関わった市民社会1SDGsは、「ミレニアム開発目標(MDGs)」に代わる新たな国連の開発目標として2015年9月の国連サミットにおいて採択された。この目標の正式名称には「私たちの世界を変革する」という、強い言葉が添えられている。気候変動、生物多様性の損失、貧困や格差、平和や人権など、地球上のさまざまな課題に対し、世界の誰もがこの新しい目標に向かって、各地で企業、NGOなど各ステークホルダーが参画し、力を合わせてこれらに取り組むことが求められているが、このような態勢になるまでに国際的なNGO・市民社会組織による働きも一役買っていることをまず明記したい。MDGsの後継(ポスト2015)として、2015年以降の国際目標をどうするかという議論は2012年の国連持続可能な開発会議(Rio+20)前後から始まる。MDGsができるまでに90年代に世界各地で社会開発に関する国連会議があったことはここでは割愛する。国連ではSDGs策定プロセスがRio+20以降にスタートし、以降関連のNGOによってSDGs策定に関する情報収集と普及啓発が行われてきた。策定プロセスには地域ごとの準備会合などにもあり、国連機関や政府だけでなく、多くのNGO、市民社会組織が参加し、多様な意見、視点が盛り込まれることとなった。2012年11月ネパールにおけるアジア太平洋地域会合に筆者は出席したが、その時には、持続可能な開発は国連・政府だけでは実現できず、多くのステークホルダーの参画が必要という点が確認され、先住民の知恵や島しょ国の声をしっかり反映しようという意見が支持された。2014年9月ニューヨークでの国連総会開催時、筆者が周辺でのサイドイベントを取材した当時も、多様な主体(マルチステークホルダー)による参加を促すための仕組みについて話し合うフォーラムや、市民社会によるモニタリングの必要性について議論する会合、政府をより市民に開かれたものにしようとする取組みに関する会合など多く開催されていた。キーワードとして、包摂性、透明性、対話、情報公開、マルチステークホルダープロセス、コミュニティエンパワメント、透明性、ジェンダー、市民参加などをよく見聞きした。実際の成果文書にも、前述のような言葉が多く盛り込まれる結果となった。ジェンダーやユースについても言及が多いのは、働きかけの成果が実ったと言うことができるだろう。特に、多くの市民社会が主張してきた内容として、不平等・格差や地球規模の諸問題に対して、人権を基盤としたアプローチを積極的に行うことや、政治的、構造的な要因をしっかりと把握し、それらを解決するために抜本的にガバナンスの課題について対応することなどが挙げられる。SDGsの前文にも記述されている、この目標を達成するための精神である“誰一人取り残さない(Leave no one behind)”という言葉も、市民社会からの多くの賛同を得たことを背景に、各国からも支持を得たものと考えられる。SDGs策定プロセスの中で2014年12月に発表された事務総長による統合報SDGs時代の市民社会一般社団法人 環境パートナーシップ会議副代表理事星野 智子HOSHINO Tomokoプロフィール環境・開発に関する国際会議や「国連持続可能な開発のための教育(ESD)」、生物多様性やG7サミットなどに関わる環境NGO活動をサポート。現在では主にSDGsの推進・普及に従事、環境保全のための対話の場づくりなどパートナーシップ推進を行っている。特 集SDGs最前線

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