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3947特 集SDGS最前線SUSPONが発行したボランティア活動に関する冊子目指すべき社会像に必要な“パートナーシップ”71992年の地球サミットで示された、「アジェンダ21」の文章には“NGOの役割の強化”の他に、“多様なセクターの参加”が書かれており、市民参加とパートナーシップの方向性が約束された。これを受けて日本では、持続可能な開発と環境問題への取組みの一環として、環境庁(当時)が国連大学と共同で「地球環境パートナーシッププラザ(GEOC)」を1996年10月に開設、地球環境に関する環境情報とパートナーシップの拠点を定めた。行政や企業、NPOの環境取組みに関するセミナー・シンポジウムの開催、持続可能な開発、環境に関する書籍・資料を所蔵したライブラリー機能、パートナーシップ情報の発信、相談対応、協働取組促進事業や国連大学との連携で国際プロジェクトの実施などを行っており、筆者の団体が運営に携わっている。SDGs達成に向けてのキーワードの一つである“パートナーシップ”の推進を主事業としているため、SDGsの普及にもいち早く取り組み、現在も展示やセミナーなどを続けている。GEOCでの環境政策対話の会合開設から10年目以後は、各地の環境パートナーシップ拠点づくりに取り組み、現在8箇所(札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、高松、熊本)に環境パートナーシップオフィス(地方EPO)が設置されており、各地域のNPOをはじめ環境保全活動に関わる方たちとのパートナーシップ事業やESD事業の推進に取り組んでいる。それぞれの地域に拠点を置くNPOが環境省地方環境事務所との協働のもとで運営団体として運営委員会や協議会を設置して運営に携わり、地域のパートナーシップ拠点として機能している。2018年4月に閣議決定された「第五次環境基本計画」には、「地域循環共生圏」という言葉が提示されている。各地域がその特性・強みを発揮して地域資源を活かし、自立・分散型の社会を形成したり、地域の特性に応じて補完し、支え合うあり方を指している。この共生圏の創造を通じて持続可能な循環共生型の社会、いわゆる“環境・生命文明社会”の実現を、今後目指すべき姿として本計画では掲げており、その計画のアプローチ方法として、幅広い関係者との“パートナーシップの充実・強化”を明記している。地球規模と国内の環境問題が関係しあい、福祉や教育、人権など他の課題とも複雑に関連しあっている現状においては、単体の組織やセクターでは解決できないことがほとんどである。それぞれの団体が協力し合い、諸課題を解決できるように、団体同士のパートナーシップが推進され、同時に企業や政府など、他セクターとのパートナーシップも進んでいくことで、環境問題の解決が円滑に進むことが期待されている。資源を持ち寄り、役割分担し、対等な立場で課題解決にのぞむパートナーシップ型の社会がこれからさらに必要であり、SDGsでもそう示されている。また、SDGsの理念として掲げられている「誰一人取り残さない」を実現するためには、市民の声を反映させ、政府や企業に働きかけるNGO活動が必要である。このために情報公開と市民参加を進めるよう行政に働きかけたり、生活者として企業の生産活動に提案したり、他分野のNGOや地域課題に取り組む住民組織などとも連携しながら、複合的に活動していくことが今後より一層求められるだろう。

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