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347特 集SDGS最前線り紹介していただくこととした。1本目は、日本のSDGs啓蒙・推進の第一人者である笹谷 秀光氏(株式会社伊藤園顧問)による「SDGs 先進国を目指す」である。笹谷氏は、近江商人の「三方良し」の概念をグローバル社会に適応させ、「発信型三方良し」としてSDGsを推進していくことを提唱している。2019年をSDGs 経営元年と位置付け、SDGs推進が企業価値の向上につながり、協創力の醸成・発揮に有効であると述べている。CSV、CSRとSDGsの関係を整理し、企業活動におけるSDGsの重要性を述べている論稿である。2本目はメディア代表として、松木 喬氏(日刊工業新聞社 編集局 編集委員)による「取材経験から経営を長続きするSDGsの活用法を考える」である。日刊工業新聞社はSDGsが国連で採択された2015年9月25日当日に、紙面1ページを使ってSDGsを特集した「日本で初めてSDGsを紹介したメディア」である。SDGsを啓発するメディア組織「SDG Media Compact(メディア・コンパクト)」(世界10カ国余から約30社・団体のみが選定されている)のメンバーであり、日本のSDGs推進メディアのトップランナーと言っても過言ではない。これまでの取材経験から、持続可能なSDGsの活用事例を具体的に述べている、興味深く、有用な論稿である。3本目は田中 信一郎氏(千葉商科大学特別客員准教授)による「自然エネルギーが日本でのパリ協定とSDGs実現のカギとなる」である。2016年に安倍内閣が脱炭素化を国際社会に約束したにもかかわらず、なかなか進展しない状況を鑑み、パリ協定とSDGsを実現するためには、政治的障壁、技術的障壁、法律的障壁、社会的障壁を取り除く必要があると述べている。そして自然エネルギーの普及こそがこの4つの障壁解決のカギであると主張している。政府、自治体、経済界、市民といったさまざまなステークホルダーが協力して自然エネルギーを推進することの重要性を述べている。4本目は橋口 京子氏(木更津市消費生活センター 消費生活相談員)による「木更津市消費生活センター発『ACTION! SDGsプロジェクト』によるSDGsの推進」である。木更津市消費生活センターは「持続可能な世界をめざすSDGsの取組みを積極的に行っている消費生活センター」として、市民や市職員に広く知られている組織である。SDGsを課題解決の「ものさし」として、学校や消費者カレッジといった関連組織と共有し、さまざまな活動を推進している。本稿ではSDGsを活用した具体事例が数多く紹介されており、消費者市民社会の実現のためにもSDGsが重要な役割を果たすことに気付かされる。5本目は星野 智子氏(一般社団法人 環境パートナーシップ会議 副代表理事)による「SDGs時代の市民社会」である。SDGs策定には市民社会の観点が大きく影響しており、「誰一人として取り残さない」SDGsが一人ひとりの市民にとっても身近な目標であることが紹介されている。国内外の市民社会団体によるSDGs活動が具体的な事例と共に示されており、SDGs推進ためには、市民の声を反映させ、政府や企業とのパートナーシップを実現するNGO活動の重要性が説かれている。6本目は佐々木 史織氏(慶應義塾大学政策・メディア研究科特任准教授)による「データサイエンスによるSDGsの実現に向けて   UN-ESCAPとの取り組み  」である。SDGsの実現には技術活用が欠かせない。本稿では、特にデータサイエンスに焦点が当てられ、AI、IoT、Cyber-Physical-Systems、ビッグデータ分析といった技術を用いたワールドワイドな自然環境保護システムが紹介されている。あらゆるステークホルダーが協力してSDGsを推進していくことの必要性が確認できる。以上、本特集に寄稿いただいた6本の論稿は、それぞれの視点からSDGsの意義とその重要性について述べている。SDGsの実現が経済発展、国際化、教育の充実、気候変動対応といった、現代日本の課題を解決し、持続可能な社会づくりに寄与することは疑う余地がない。企業、自治体、大学、NGOといったマルチステークホルダーの協力によって、さらにSDGsを推進していければと考えている。千葉商科大学副学長 経済研究所長橋本 隆子HASHIMOTO Takako図1 SDGs(Sustainable Development Goals)

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