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5247した場合、一般的には資本額や売上額、従業員数等の経営規模が挙げられると思われる。しかしながら、実際に中小企業に入社し、これまでにおける自身の業務経験を通じて一番痛感した相違点は「組織内における体系化されたシステムの有無」ではなかろうかと個人的には考える。大手企業(ならびに直系子会社や関連会社)の組織は体系化された全社的なシステムが構築され、各自の業務範囲も比較的明確化されているものと認識をする。反対に中小企業の組織はこれまでの弊社やお取引先様などの経営層へヒアリングをする限り、体系化された全社的なシステムは構築されていないケースが多く、その企業が長年にわたり培ってきた独自ルールや現場担当者の経験と勘に基づいた属人的な業務で運営されているのが実態であろう。当然のことながら、業務範囲も大手企業と比較すると明確化されておらず、社員一人ひとりにおける業務の多能工化を必然的に求められる傾向にあると認識をする。ちなみに前職となる東レ時代に所属していた事業部門は欧州製の輸入建材を取り扱う部署であったが、業務内容は主に官公庁向け営業ならびに大手設計事務所などへの設計スペックイン活動から、各建設現場の総合建設業者(ゼネコン)決定後における代理店受注サポート業務にまでおよび、また所属部署は少数精鋭にての運営、且つ本社勤務で年齢が一番若かったこともあり今後におけるキャリア形成の一環として日常の営業活動以外に販促資料作成や代理店総会の運営業務等にも携わっていた。前職では相当量の業務をこなしてきた経緯からも業種が変われどもある程度は最初からこなせるという自信は持っていたが、弊社へ入社以降は東レ時代を遥かに上回る範囲の業務対応が必要な点には正直驚きを隠せなかった。大手企業(ならびに直系子会社や関連会社)から中小企業ならびにベンチャー企業などへ転じた際に、恐らく体系化されていないシステム内での業務を推進せざるを得ない状況について、ある種のカルチャーショックを大なり小なり受ける部分ではなかろうかと推察される。実際にインターネット転職情報サイト内の記事などでは、大手企業での実績を評価され中小企業に招聘され入社するも、ありとあらゆる点で勝手が違い過ぎる(企業風土が異なり過ぎると言ったほうが適正)ために短期間で退職に至ったという例は多く散見される。今後、IoT(Internet of Things)やAI(人工知能)の全世界的な加速に伴う産業構造自体の劇的な変化は不可避のことと思われ、一部業界の先行きを不安視する優秀な人材の流出に伴ない転職市場はより一層の賑わいを見せるものと推察される。有能な人材を迎え入れ自社の更なる発展を目指せる機会が到来する環境が出来つつある点については大いに歓迎すべきことではあるが、中小企業における人材定着を促進させる観点からも組織内の体系化されたシステム構築、ならびに再整備は避けては通れないものと強く認識をする。大手企業では模倣が相当難しい中小企業の強み一般的には大手企業と比較すると中小企業は色々な面でメリットが非常に少ないという幻想に囚われがちだが、実際には大手企業では模倣が相当難しい中小企業ならではの強みが多数存在すると認識する。また、昨今におけるアナログ化情報社会からデジタル化情報社会への趨勢により、今後の中小企業における事業展開を見据えた場合、これまでとは比較にならないほどのビジネスチャンスが広がりつつあるとも痛感しているが、数ある強みの中でも特に突出されたものについて、下記に列挙してみたい。1.小回りが利く我々を取り巻く事業環境は日を追うごとに非連続の革新を遂げているが、中小企業は少数精鋭の事業運営に取り組んでいるがゆえに新規事業の仕掛けや方針転換など、その場に応じた小回りが直ぐに利くということが最大の強みであると考える。反対に、これまで大手企業は戦前の旧日本海軍戦艦に代表されるような大鑑巨砲主義をとり、全国各地に支店と多数の社員を配し、高度経済成長という時代の波に乗り事業拡大を遂げてきた。しかしながら1990年代以降の国内経済低迷や各業界における市場自体の成熟化が加速する中で、とりわけ近年におけるインターネットの普及に伴い全産業において、従前より常

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