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5447論理的な説明が出来ないという点であると認識する。上述のとおり属人的な業務が横行し、万が一ベテラン社員に不測の事態が発生した場合には他の社員による業務代行自体が困難を極め、最悪の場合には事業収束もせざるを得ない状況にも追い込まれると共に、企業業績にも多大な影響を及ぼすものと認識する。2.社員向けの教育不足経営の神様と崇められたパナソニック株式会社(旧・松下電器産業株式会社)創業者の松下幸之助氏の言葉の1つに「事業は人なり」とあるが、企業の成長を支える原動力となるのは社員一人ひとりの力であることは言うまでもない。中小企業は大手企業と比較し全般的な傾向として言えるのは、社員向け研修ならびに社員教育が相当不足しているように感じる。小生が新卒入社した当時東京証券取引所一部上場のキヤノンシステムアンドサポート株式会社では、東京都品川区東品川に所在していた本社で開催された入社式の翌日より、板橋区内の自社研修センターにて合同研修が開催され、3ヶ月間にわたりビジネスに必要な基本知識について集中的に受講した。現在、当時の状況を振り返ると、大変に恵まれた環境下での研修を受講することが出来たと痛感すると共に、合同研修の受講内容はその後のビジネスキャリアにおける血となり肉となったのは過言ではない。では、反対にこれまでの弊社状況を振り返ると中途採用が多かったということもあるが、社員教育はOJTという大義名分のもと現場に全て一任をしているのが実情であった。現場の実務は当然のことながら日を追うごとに遂行能力は向上していくが、ビジネス文書や企画書などの作成内容については、お世辞にも目も当てられない惨憺たる状況だった。小生が弊社入社以降、特に事務系社員を中心とした文書添削を繰り返し実施しているが、年を重ねるごとに各社員の文書力が向上している点が垣間見られると共に、ここ最近ではお取引先様より社員が記載した文書についてお褒めの言葉を頂戴するまでに成長したことについては、あらためて教育の重要性を痛感。なお、弊社では2018年2月に政府系施策実施機関にあたる東京中小企業投資育成株式会社を新たな株主として迎え入れたが、同社で用意されている各種研修制度を大いに活用し、弊社各社員のスキルアップに繋げていきたいと考えている。3.戦略的な広告宣伝方法の未確立中小企業における広告宣伝の表現方法について、全般として非常に苦手な傾向にあるものと認識する。上述のとおり大手企業には無い尖った製品があるにも関わらず、論理的な説明やプレゼンテーションが出来ないがゆえに一般汎用製品と同じレッドオーシャン市場で戦わざるを得なく、常にコスト競争に晒される実態をこれまでに何度となく目の当たりにしてきた。実際に弊社もつい数年前までは戦略的な広告宣伝を大変苦手としており、現在確立されている販促資料等は一切無かった。当時在籍していた営業管掌の取締役は、限られた人数で満遍なく現場訪問をするには限界が有り、販促資料などの重要性は理解しつつあった。しかしながら、当時の弊社営業担当者は論理的な説明や資料作成などは相当苦手としており、お取引先様へ足繁く顔を出し、気心知れた関係の中で自社製品拡販をお願いするという、いわば他力本願に近い営業スタイルを貫くしか術が無かったのが実態であった。弊社営業担当より製品説明を受けた各お取引先様は商社などの中間流通業者に対しセールスポイントを口頭にて懇切丁寧に説明をされるものの、販売チャネルが複雑化していくほど、セールスポイントが口頭のみの説明がゆえに的確に伝わなくなり、結果として製品拡販には繋がらなかったケースが多かったものと分析する。中小企業が今後における持続的発展を遂げるためにはこれまで中小企業における「強み」と「弱み」について述べてきたが、企業における一番の命題でもある今後における持続的発展を遂げていかなければならない。前職までの勤務経験、ならびに現在中小企業の一経営者という立場での日々における事業運営を通じ、中小企業経営の中においても個人的に特に必要と捉えている事項について下記に列挙してみたい。

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