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58471.はじめに 私は墨田区の向島橘銀座商店街に関係する先生方とのご縁で、千葉商科大学(以下、本学と記す)の接点ができ、また、エネルギーに関する業務経験や研究から、本学の学長プロジェクトをはじめ各種講演会等に参加させていただき、さらにはそのご縁で執筆の機会をいただいた。これまでのご縁に感謝するとともに、本稿では環境教育を重視する本学の基本的な考え方を踏まえ、熱供給事業についてご紹介することとする。なお、本学の「丸の内サテライトキャンパス」がある「国際ビル」にも、地域冷暖房が導入されていることを最初にお伝えし、本稿を身近なテーマとしてお読みいただければ幸いである。 熱供給事業とは、建物内の冷房・暖房・給湯等を行うために、プラントで冷水・蒸気・温水を製造し、導管(地域配管)を用いて供給する事業である。日本標準産業分類の大分類の中に、「電気・ガス・熱供給・水道業」があり、中分類としての「熱供給業」があるものの、事業規模や規制法である「熱供給事業法」の適用対象か否かという分類上の区別はない。熱供給事業は一般的には、電気・ガスに続く第三の公益事業と位置付けられ、産業分類も同一になされているが、熱供給事業そのものは、電気・ガス・水道事業と比べて、残念ながら規模的にも小さく、社会的認知度も高いものではない。さらには「熱供給事業法」の適用対象外の熱供給事業も存在する。本稿ではすべての熱供給事業を対象とし、地域エネルギー供給の視点から、分散型発電システムまで含めて述べていきたい。 また、熱供給と同様な意味で「地域冷暖房」がある。英語の頭文字をとると、「DHC」(District Heating and Coolingの略)で、多くの皆様が思い浮かべる会社とは全く異なり、熱供給事業を営む会社名につけられることもある。なお、一部の地域では「DH」(地域暖房)の場合もある。 熱供給事業は1875年のドイツ、1877年のアメリカで地域暖房が行われたのが出発点である。また、地域冷暖房は1938年にワシントンのキャピトルヒルに設けられたものが世界初である。我が国では、1898年に東大医学部病院に蒸気供給を行ったのが最初の地域暖房であり、1970年の大阪万博の会場の冷房及び千里ニュータウン地区への地域冷暖房の供給が、その後の熱供給事業発展のスタートラインとなった1。2.熱供給システムとその社会的意義(1)熱供給システム 地域暖房はボイラで蒸気または温水を製造し、導管で需要家に熱を供給するものである。蒸気は圧力が高く大量の輸送にはよいが、熱ロスについては温水の方が小さい。また、地域冷暖房で用いられる冷凍機のひとつに蒸気吸収冷凍機があり、これを用いれば蒸気ボイラは冷房及び暖房の熱源機となる。これに対して、熱供給事業の現状と課題及び将来展望トピックス横浜国立大学大学院都市イノベーション学府 博士課程後期横田 英靖YOKOTA Hidehiroプロフィール1979年東京ガス㈱に入社後、地域冷暖房、コージェネレーション等の業務に従事。2013年同社定年退職後、熱供給会社勤務を経て、現在、省エネルギーの診断指導に従事。技術士(機械・総合技術監理部門)、中小企業診断士。「水産都市の環境・防災まちづくりに向けた地域エネルギーシステムに関する研究」で博士論文提出。

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