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59トピックス47冷房は電気式冷凍機を用いる方法もある。需要家側の熱負荷等を考慮して、どのような組合せがよいか、環境性や経済性から総合的に検討する必要がある。イメージ図を図1に示す。また、水や空気等の熱を集めて、圧縮すると暖房、膨張すると冷房という原理のヒートポンプを用いて、冷水や温水を蓄熱槽に蓄えて冷暖房を行うシステムを図2に示す。さらに、分散型発電システムとしてコージェネレーションを導入し、自営線を用いて当該地区に熱と電力を供給するシステムを図3に示す。図1 地域冷暖房のイメージ 清掃工場廃熱を給湯や冷暖房に利用したり、下水・河川水・海水・地下水・地中熱等の未利用エネルギーを用いてヒートポンプの熱源としたりする実施例もかなりある。また、バイオマスをボイラの燃料やコージェネレーションの燃料ガス化の原料として用いたり、雪氷を冷房に、太陽熱を暖房に用いたりしている、再生可能エネルギーの利用例もある。図2 ヒートポンプのイメージ図3 コージェネレーションのイメージ(2)熱供給事業の社会的意義 地域エネルギーシステムは、ある意味集中システムであり、別の見方をすれば分散システムでもある。集中システムと分散システムを比較すると、集中システムの方が大型であり効率性はよい。それゆえ、省エネルギーシステムであり、地球温暖化対策にも寄与できる。また、熱源が集中していることから防災上の優位性があり、蓄熱槽を有していれば、災害時の水利用もできる。さらに、複数の需要家のエネルギー使用時間帯の違いから、最大熱需要の合計値は集中した方が小さくなるので、設備費も安価にでき、燃料費や人件費等も抑制することができる。一方、需要家サイドからは、機械室の有効活用や設備管理の省力化等が可能となる。さらに、街並みの景観が美しくなるという効果もある。また、分散型発電システムとして、コージェネレーション等の発電設備を併設する場合、自営線で地域内への電力供給を行っていれば、例えば北海道胆振東部地震時のブラックアウトのようなことが発生しても、供給地域内に対し電力及び熱の供給を行うことができ、防災効果はさらに高まる。3.熱供給事業法に基づく  熱供給について 我が国では、前述の大阪万博の後、大気汚染防止を目的に、東京の新宿副都心や札幌オリンピックを控えた北海道で、地域冷暖房あるいは地域暖房の導入促進が進められた。地域冷暖房システムは前述のように、集中システムとして省エネルギーに資するものである。一方、硫黄酸化物や窒素酸化物を中心とした大気汚染対策は、燃料転換や燃焼改善等によるもので、基本的には別物である。しかしながら、個別の建物では経済性が優先され、なかなか燃料転換が進まない現状が当時あった。そこで政策的に地域冷暖房の導入を前面に出し、集中システムとしてのプラントで大気汚染対策を行ったことは、大変意義深いものであった。我が国において、このような時代的背景の下、1972年12月に「熱供給事業法」が施行された。 「熱供給事業法」は規制法であり、次のすべての要件を満たす場合に、事業許可がなされる。①導管で供給し、一般の需要に応じる、②複数の建物に供給する、③加熱され、若しくは冷却された水又は蒸気を熱媒体

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