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61トピックス47 この場合に、熱供給事業は成立するであろうか。恐らく、「否」である。教育機関の熱負荷はほぼ同じで平日の昼間が大きく、特に長期休暇期間の負荷が低い。このため、設備規模は大きくなり、かつ病院への供給を考えれば24時間安定的に熱供給する必要もある。このため、基本料金がかなり高くなり、「買い手」にとっての経済的負担が大きくなる。それゆえ、熱供給事業としては成立が難しい。 ここで、仮に本学が商業施設、和洋女子大学がホテル、東京医科歯科大学教養部がオフィスビルになったとしたら、熱供給事業として成立する可能性がある。熱負荷のパターンが用途ごとに異なり、集約メリットを享受できるからである。この場合、仮にコージェネレーションシステムを導入できれば、平常時の省エネルギーはもとより、各建物に自営線で電力供給することにより災害時の電源確保もできる。そして、これもイメージを説明するための仮想の話ではあるが、国府台地区で太陽光発電や風力発電を行い、スマートエネルギーネットワークとしてICTを活用して連携できれば、再生可能エネルギーの電力をできるだけ有効利用し、コージェネレーションシステムを調整用電源として用いることも可能となる。 以上の仮想のように、熱供給事業法の適用規模以上の場合、用途が混在した建物が密集すると、熱供給事業としての事業性も向上する。それゆえ、業務用の建物を中心とした熱供給事業は、都心部に集中する傾向にある。(3)熱供給事業法に基づく営業地域 熱供給事業の施設は地下等に設置されている事例が多く、地域導管は洞道という小さなトンネルの中や共同溝に設置されている、あるいは直接埋設されており、目立たない。それゆえ、一般的にはどこで熱供給事業がなされているかわかりづらい。 例えば、千葉県内では、幕張新都心、千葉ニュータウンや千葉新町のオフィスビルや商業施設に地域冷暖房の供給がなされている。また、大手町・丸の内地域、新宿新都心、東京臨海副都心、さいたま新都心、みなとみらい21、六本木ヒルズ、スカイツリー、…等、市川近郊でも多くの熱供給事業が行われている。 なお、全国の熱供給事業(熱供給事業法の要件を満たすもの)全体については、一般社団法人熱供給事業協会のホームページ4に紹介されているので、参照願いたい。(4)熱供給事業と三方よしの商い 地域冷暖房についての認知度は残念ながら高くはないが、読者の皆様あるいは本学卒業生の勤務先やその取引先等でも、地域冷暖房が導入されている地域は意外と多い。そこで、省エネルギーシステムである地域冷暖房の地域での商品の購入や取引は、「エシカル」と考えることはできないだろうか。さらに、SDGsの視点では、「7.エネルギーをみんなに そしてクリーンに」、「13.気候変動に具体的な対策を」はもとより、「9.産業と技術革新の基盤をつくろう」、「11.住み続けられるまちづくりを」、「12.つくる責任 つかう責任」、「17.パートナーシップで目標を達成しよう」に貢献できるのではないか、と考える。 熱供給事業の地域内では、「国府台コンソーシアム」と同様、同じまちの仲間として連携している例が見られる。熱供給の「売り手」と「買い手」を超えて、「環境にやさしいまちづくり」や「パートナーとしての連携」が行われている。熱供給事業において、「世間よし」は共通しており、さらにこの例のように、「売り手よし」、「買い手よし」と「三方よし」を目指せるものと考える。現状、そこまで難しい事業者の場合であっても、「売り手」も「買い手」もそれぞれの環境報告書(自社または親会社)の中でPRすることにより、「三方よし」に近づけるのではないかと思われる。 なお、これまでは熱供給事業法対象の熱供給事業を想定して述べてきたが、熱供給事業法対象外の熱供給事業も同様なことが言える。むしろ、自治体も含めて地産地消の熱供給をPRしている好事例もある。5.熱供給事業法対象外の熱供給事業(1)熱供給事業法対象外に対する法的解釈 熱供給事業法の適用条件は第3章で述べたとおりであり、その逆で、①特定の需要に応じる、②一つの建物に供給する、③加熱能力21GJ/h未満の規模とする、のいずれかであれば、熱供給事業法の対象外となる。 「特定の需要に応じる」とは、熱供給事業の事業主体と供給先とが資本関係にある場合を指し、「一つの

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