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62トピックス47建物に供給する」とは、資本関係にない建物が一つの場合をいう。これらをまとめると、建物の所有者が出資をして事業主体を構成する場合は、熱供給事業の事業主体と資本関係にない複数の建物がなければ、熱供給事業が成立しないということである。従って、供給先がすべて共同出資して事業主体を構成する場合や、これに加えて資本関係のない1棟に供給する場合は、規模が大きくても熱供給事業法の対象とはならない。さらに、加熱能力21GJ/h未満の条件は、規模が小さければ供給先がたくさんあっても、対象にならないことを意味する。なお、加熱能力21GJ/hは住宅1,000戸への地域暖房を基準として定められたものである。 現実には、特定の需要に応じたり、一つの建物に供給したりする「地点熱供給」も相当数ある5。さらに、この他にも地産地消としてエネルギーの有効利用を行っている例もある。この内、北海道下川町の事例を紹介する。(2)下川町の熱供給事業 下川町では、2004年度に木質バイオマスボイラを導入し、現在、30の公共施設に熱供給を行っている。2019年度からは発電出力165kW、熱出力260kWの木質ペレットガス化熱電併給装置を11セット並べて設置し、電力は電力会社に売電、熱は温水として地域熱供給に活用する予定となっている。現在公共施設の約6割を木質バイオマスボイラで供給しており、公共施設での実績を積んだ後、周辺の公営住宅、一般住宅、事業所等へ熱供給の範囲を拡大する予定となっている6。 木質ペレットガス化熱電併給装置は、ドイツ製で木質ペレットをガス化し、ガスエンジンに供給する。また、熱供給システムはデンマークで導入が進められている、「第4世代地域熱供給システム」で、80℃の供給温度をどの程度低温化できるか検証する計画である。さらに、蓄熱槽を設け、需要と供給のバランス調整を行う。 バイオマスエネルギーは、再生可能エネルギーであるものの、太陽光発電や風力発電等とは異なり、資源循環を伴うものである。例えば木質バイオマスであれば、原料の運搬エネルギーや費用、残渣としての灰の運搬エネルギーや費用並びに処理費用を考慮する必要がある。このように考えると、原料産地や加工の近隣であることが求められる。逆に、地産地消のエネルギーとして原料を創出できる地域では、熱供給への活用を期待したい。6.海外の熱供給事業(1)概要 「諸外国における熱供給事業制度に関する調査」7によれば、「市場に任せる枠組み」、「公的部門による制度運用の枠組み」、「価格やインセンティブ等の経済的な手法を活用した枠組み」等、国によって制度運用も様々である。例えば、ドイツでは、国の事業規制はないが、熱供給事業者と一般家庭需要者との間の契約が重要となっている。また、地域導管の占有は国の規制はないが、地方自治体の認可が必要となる。デンマークでは、熱供給法の下、国は地方自治体に熱供給事業計画の策定を義務付けている。なお、熱供給事業は非営利運営と位置付けられている。アメリカでは、連邦レベルの規制はなく、州ごとの規制によって異なっている。近年は、エネルギーセキュリティ、災害時のレジリエンス、地球温暖化対策の観点から、コージェネレーションや熱供給事業が注目されている。 この他、イギリスではオリンピックを契機としてロンドンでの取組みが活発化した経緯があり、フランスでは再生可能エネルギーと天然ガスにより、主として住宅用への熱供給が行われている。また、韓国では、国の都市計画方針として熱供給事業の推進が図られ、国民の15%が熱供給を利用している。さらに、スウェーデンでは地方自治体の権限が強く、290市中250市で熱供給がなされる等、大変普及率が高い。また、フィンランドでは普及率が約50%、特にヘルシンキでは90%以上となっている他、総発電量に占めるCHP(熱電併給プラント、コージェネレーション)の割合が36%と高く、熱生産の74%がCHP廃熱でまかなわれている。(2)デンマークの熱供給事業 デンマークでは、2012年のエネルギー合意により、2050年までに化石燃料からの独立を目指すことが決定した。「デンマーク地域熱供給白書」8によれば、2014年時点の地域熱供給の主要エネルギー源は、再生可能エネルギーが49.1%、廃棄物が8.7%、天然ガ

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