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63トピックス47スが23.9%、石炭が15.5%、石油が2.3%、電気(ヒートポンプ、電気ボイラ)が0.5%となっており、既に再生可能エネルギーが約半分となっている。廃棄物発電やCHPに潜熱回収設備が装備され、多くの場合、ヒートポンプも併設されている。また、デンマークの熱供給事業の特徴は、CHPプラント、太陽熱集熱パネル、工場の余熱等、エネルギーが得られる時に熱として貯蔵し、必要な時に使用することである。これは時刻別変動に対応する短期間蓄熱と、夏に蓄え秋や冬に使用する、季節間蓄熱とがある。なお、電力の需給調整としても蓄熱が利用されている。 デンマークでは、①第1世代(200℃以上の蒸気、1880~1930年)、②第2世代(100℃以上の高温水、1930~1980年)、③第3世代(100℃以下の中温水、1980~2020年)、④第4世代(50~70℃の低温水、2020~2050年)と熱供給システムが進展している。第4世代では、低温水であっても必要な量や温度を保てるよう、断熱性の高い熱輸送導管を用い、需要と供給のきめ細かなコントロールを行う。また、コペンハーゲンでは地域冷房も行われている。冷熱製造用に、冬期は海水利用、夏期は発電所廃熱の利用がなされている。(3)ドイツのシュタットベルケ シュタットベルケとは、産業革命後、エネルギー需要が急増した160年程前に、地域が自律的に生活や産業のインフラを整備するために設立した公的事業体が起源とされている。電気・ガス・地域熱供給・水道・廃棄物処理・公共交通等のインフラサービスを提供し、地域に密着したサービスが強みである。なお、ドイツの配電網の45%をシュタットベルケが運営している9。 シュタットベルケの地域分散型発電所は需要家に近接しており、廃熱利用の熱供給にも適している。また、ドイツの熱供給地域導管は、1970年代のオイルショック時に国の支援により整備され、現在では多くが償却を終えており、事業性も良好となる。 なお、我が国でも、「みやまスマートエネルギー」等いくつかの日本版シュタットベルケも存在し、(一社)日本シュタットベルケネットワーク12も設立されている。7.我が国の熱供給事業の  課題と将来展望(1)既存の地域冷暖房の課題 都心部でエネルギープラントが建物の地下等にある場合、長期的に考えると建物の建替え時期にプラントの移設が必要であり、個別の建物と比べて最大の難点と考えられる。都心部では大規模な再開発地域でない限り独立プラントを設けることは難しく、また容積率緩和措置のメリットもあり、新規建築建物の地下等にプラントが設けられる例が多い。不測の事態に対応するリスク回避の課題も含めて、将来的なプラント建物の建替えも考慮し、同一社内あるいは近隣別会社の異なるプラントを地域導管で連携することが行われるようになってきた。ただし、都心部での地域導管敷設は難題であり、費用と時間を要する。 一方、住宅系の事業者では、人口減少や個別空調への切替えに伴う熱需要の減少等により、経営が圧迫されるケースも見られる13。さらに、業務用及び住宅用に共通して、老朽化設備の更新あるいは24時間勤務の運転員や有資格技術者の確保等の課題もある。(2)制度的な課題と対応 熱供給事業法が施行された当時と比べて、現在は熱供給事業も多様化しており、熱供給事業法以外のものとの区別がはっきりしない。公益性を論じるのであれば、加熱能力21GJ/h未満の熱供給事業であっても、同様に扱うべきではないか。そもそも、規模を論じるのであれば、加熱能力だけではなく、冷凍能力も含めるべきではないのか。この他の課題も含めて、2016年の法改正後も熱供給事業法については、種々の疑問が残る。 今後の熱供給事業の発展を考えた場合、まちづくりと一体となり、「供給側も需要側も地球環境にやさしいよい街を創っていく」ということが必要であり、単に資本関係の有無だけで公益性を論じるのではなく、一体感の下ではもはや公益性はない、と考えるのが自然ではないだろうか。そして、熱供給事業の目的や形態も地域ごとに異なり、地方自治体が中心となり地域熱供給を推進し、例えば共同溝の整備や熱供給事業の支援策を検討するのがよいと考える。 そこで、規模も全く異なる電力・ガス事業とは切離

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