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64トピックス47し、規制法としての熱供給事業法を廃止して、「地域エネルギー事業推進法」のような新法を制定することを提案したい。まちづくりと一体となった地域エネルギーに関し、規模の如何を問わず推進する仕組み、省エネルギーとしての分散型発電システムや地域冷暖房に加えて、再生可能エネルギーや水素のような新エネルギーを取り込む、地域エネルギーシステムを普及するための法整備のイメージである。 なお、熱供給事業は道路埋設物としての熱輸送導管を伴い、その占有許可が必要なために、地域冷暖房施設を熱供給事業法で公益施設として認めることが不可欠であった。そこで、推進法の下では、熱供給事業法に代わるものが必要となる。理想的には地方自治体が熱輸送導管を整備する、あるいは地方自治体が熱供給事業を運営するのがよいが、そこまでいかなくても、今後は、熱供給事業を地方自治体が地域共同事業として認可し、その証をもって道路管理者が占有を許可する、そのような内容を推進法に織り込む必要があると考える。そのためにも、シュタットベルケのような公的事業体が増加することを期待したい。(3)将来展望 我が国の熱供給事業は50年近くの歴史があり、多くの建設や運用の中で、技術ノウハウが蓄えられ、研究もなされてきた。また、設備産業であるがゆえに、すぐに新たなシステムに切り替えることが難しいという側面がある。一方でパリ協定に従い、2030年には2013年度比26%の温室効果ガスの削減目標がある。既存のプラントでは、スペース等の余裕があればコージェネレーションの導入や、できうる限りの省エネルギーの推進が必要である。 また、新規のプラントでは、立地条件が満たされれば、デンマークのような先進的システムの導入に期待したい。ただし、立地条件を満たせる地域は限定され、多くの既存のプラントのことも考慮すると、一次エネルギー側の転換、即ち、大規模風力発電等再生可能エネルギーへの転換、あるいは再生可能エネルギー由来の水素エネルギー(必要な場合は海外からの調達も含む)の供給等が、将来的には望まれる。8.むすび 本稿では、我が国の熱供給事業や海外の動向について、これまで私が熱供給事業の建設・運営・管理を行ってきた3社での経験を踏まえて述べるとともに、関連学協会で収集した情報をもとに執筆し、さらには、我が国の地域エネルギー事業の将来的な発展を願う想いで、私見としての提案を行った。 冒頭にも述べた、「丸の内サテライトキャンパス」は「有楽町地域」の地域冷暖房から供給を受け、「省エネルギーで地球環境にやさしい空調システム」を採用している。さらに、昨年には新設の「丸の内二重橋ビル」にコージェネレーションが設置されBCP機能が向上し、本年は隣接の「丸の内二丁目地域」とも蒸気連携ネットワークが計画されている14。自然エネルギー100%大学としての本学の取組みは大変素晴らしく、省エネルギー推進と併せて教育効果も大きい。「丸の内サテライトキャンパス」も、地域冷暖房の先端地域に設置されていることを、是非、本学のPRや教育に活用していただけることを期待したい。1 井上宇市(1993)『冷凍空調史』日本冷凍空調設備工業連合会。2 資源エネルギー庁電力・ガス事業部政策課熱供給産業室監修(2018)『熱供給事業便覧(平成29年度版)』日本熱供給事業協会。3 佐土原聡(2018)「スマートシティ実現に資する地域エネルギーシステムのあり方」『都市計画』335号、日本都市計画学会。4 「一般社団法人日本熱供給事業協会ホームページ」『あなたの街の地域熱供給事業』。:http://www.jdhc.or.jp/category/area/5 「国土交通省ホームページ」『市街地整備、環境関連施策、事例紹介・地点熱供給事業地区』。:http://www.mlit.go.jp/common/001113136.pdf6 「下川町森林総合産業推進課バイオマス産業戦略室ホームページ」『ゼロからわかる森林バイオマス熱電併給』。:  https://www.town.shimokawa.hokkaido.jp/section/shinrin/les/Q-Akaisetsusho.pdf7 「平成26年度国際エネルギー使用合理化等対策事業報告書」(2015)『諸外国における熱供給事業制度に関する調査』プライスウォーターハウスクーパース。8 「日本語版デンマーク地域熱供給白書」(2016)『都市部のエネルギー効率化』。9 佐土原聡(2018)「熱エネルギーネットワークの役割の変遷と国土強靭化に向けて」『都市環境エネルギー協会第25回都市環境エネルギーシンポジウム』。10 松井英章(2013)「電力自由化と地域エネルギー事業」『日本総研レビュー』Vol.9、No.10。11 オリバー・ワーグナー他(2018)『シュタットベルケの現状と新設の日独比較』ヴッパタール気候・環境・エネルギー研究所。12 「一般社団法人日本シュタットベルケネットワークホームページ」。:https://www.jswnw.jp/13 浦上健司(2016)「寒冷地における住宅向け地域熱供給システムの衰退事例から学ぶ普及課題」『環境情報科学 学術研究論文集』30。14 「丸の内熱供給株式会社ホームページ」『事業内容、有楽町』。:http://www.marunetu.co.jp/business_yurakucho.html参考文献

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