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547特 集SDGS最前線良し、世間良し)のように、もともとあった考えに近いように見える。しかし、実は、重要な違いがある。滋賀県彦根市にある「三方よし研究所」に行った際、三方良しの古文書などの展示と並んで、同様に心得とされる次の言葉に目が留まった。「陰徳善事」。これは、「人知れず社会に貢献しても、わかる人にはわかる」という意味である。日本人の美徳であるが、日本企業を内弁慶的にしているのはこの考えの影響であろう。今は、世代の違いで「わかる人にはわかる」といった空気を読む方法は通じない。ましてやグローバルには通用するわけがない。何より、発信しないと相手に気づきを与えられず、イノベーションにつながらないことが最大の課題だ。そこで、筆者はSDGsも使い発信面で補正した「発信型三方良し」を新たな経営戦略として提唱している。これが日本型の共有価値創造戦略となるであろう。⑵SDGs経営元年企業経営は、社会・環境への要請の高まり、ICTの進化、グローバル化の深化など内外の激しい変化の中で革新的な対応が求められている。ESG、すなわち、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)への配慮を企業に対し求めるさまざまな関係者の動きが世界的に強まっている。筆者は、31年間の農林水産省での行政経験(うち3年間は外務省、3年間は環境省に出向)と、株式会社伊藤園の企業現場での10年間にわたる企業の社会的責任(CSR)を担当した経験から、2015年は実に「節目」の年であったと実感する。Eではパリ協定、EとSとGでSDGs、Gではコーポレートガバナンス・コードの適用である。そこで、この年は「ESG元年」であると筆者は言ってきた。持続可能性を理解し経営に入れ込まなければ齟齬をきたす「持続可能性新時代」の幕開けであり、潮目が大きく変わった。この激変の中で、企業経営にとって指針になりうる国際的な共通言語が望まれた。2015年9月の国連サミットで採択されたSDGsは、2030年を目標年次とする持続可能性の共通言語として活用することができる。これをうまく活用すれば、ぎりぎり2020年の東京五輪・パラリンピック(以下、「五輪」と略す)に間に合い、招致が決まった2025年の大阪・関西万国博覧会の成功にもつながる。五輪や万博ではSDGsを念頭において調達、イベント運営のルールが策定されていくからだ。そして、SDGsの目標年次2030年を目指していくことになる。このようなタイムラインの「締め切り効果」も活かして、SDGsを踏まえた経営を目指す。2019年は「SDGs経営元年」とすべき年である(図表1)。図表1 持続可能性をめぐるタイムライン

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