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647特 集SDGS最前線CSR再考とCSV3⑴CSR再考 ISO26000による「社会対応力」の醸成このような中で関係者はどう対処すべきであろうか。企業・組織と社会的責任の関係や持続可能な社会づくりについては、2010年発行の「社会的責任の手引」(ISO26000)が羅針盤機能を発揮する(図表2)。ISO26000は当初は企業の社会的責任(CSR)の手引(ガイダンス)を目指して議論されたが、社会的責任にはすべてのステークホルダーの役割が必要であるとの結論に至り、Corporate(企業)を取って、「社会的責任(Social Responsibility:SR)の手引」として合意された。企業などのあらゆる組織が社会課題に向き合ううえでの基本的考え方や「To doリスト」が示された、社会・環境課題対応の組織内へのいわば「実装マニュアル」として成立した。これは法的拘束力のない規格で、いわゆるソフトローではあるが、最近国際合意がなかなか難しくなっている中で世界的合意があって網羅性も高く、SRを考えるうえでは汎用性が極めて高い組織全般の手引となった。もちろん企業の場合はCSRのガイダンスになり、大学であれば大学の社会的責任(University Social Responsibility)、つまりUSRのガイダンスになる。国内では日本工業規格(JIS規格)にもなっていて、政府内の議論の基準である。その優れた特徴は、それまでのフィランソロピー(慈善活動)的なSRではなく、「本業のSR」が社会的責任を遂行するうえで基本であるとのSRの定義を示した点である。加えて、「To doリスト」として、7つの中核主題を示した。組織統治を固めたうえで、人権、労働慣行、環境、公正な事業慣行、消費者課題、コミュニティ課題に対処すべきとした。ISO26000は改めて見直し評価すべきガイダンスである。⑵CSRとCSV、ESGここで、一点留意事項を挙げておきたい。SRの訳語の社会的「責任」という用語のニュアンスが少し狭いので、日本ではSRがともすれば受け身型の意味になる。そのため、筆者は、「Response+ability」=社会対応力と捉え直す必要があると考えている。本業のSRで企業・組織の「社会対応力」を醸成し、SDGsなどの社会課題に対し本業で対処していく組織の力を引き出すことができる。※以下では主として企業の社会的責任を考えるのでCSRと表現する。企業の場合はISO26000で本業のCSRに切り替えておけば、CSRの基本を整えたうえで、経営上の重要課題を抽出して、CSVという社会課題解決型の競争戦略を活用することができる。図表2 国際標準ISO26000の特徴とESGとの関連

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