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7947設置された同センターは、平成30年度に県主導で構築された「事業承継ネットワークちば」におけるワンストップ窓口として機能し、さらにプッシュ型のスタートに呼応し、とくに親族内承継に対応すべく、人員増強・体制拡充のうえ関係当事者の利便性向上を図り相談窓口を整理した。また、M&Aを含めた同センター対応の具体的相談事例を紹介戴き、効果的な無料公的相談窓口の活用・相談を強く勧奨され纏められた。(3)日本政策金融公庫総合研究所 主席研究員 井上考二氏からの調査報告 同氏からの「経営資源の譲り渡し支援~廃業時の課題解決~」と題した報告によれば、現在、必ずしも一般的な手法ではない経営資源の譲り渡しが、とくに廃業時における課題となる従業員雇用や取引先関係の維持に資する手段と成り得ることを、同研究所が実施したアンケート調査から推論し、その有効性からの促進策(①情報提供やコンサルによる経営者の啓発、②譲り渡し相手の紹介、③価格情報を蓄積した対価相場の形成、④スムーズな譲り渡しの支援策)を提起、及び重要性を強調され纏められた。(4)元有限会社かずさ企画 代表取締役 監物清一氏、及び株式会社事業承継支援 M&Aコンサルタント 山川亮太氏からの事例報告 両氏による「事業承継における第三者承継(M&A)の成功事例の紹介」と題したインタビュー形式による報告は、M&Aによる事業承継を決断された経緯(後継者不在、健康不安等)、実行の過程、関係者の心理状況、完了後の経過等が「M&A実行者」という立場から語られるという、希少かつ貴重な機会であった。また、両氏からは、事業承継における後継者問題の解決にはM&Aは有効な手段であることを訴求され纏められた。(5)パネルディスカッション パネルディスカッションでは、10年単位の長期的視点に立った事業承継支援の課題について、①支援機関の対話力向上による支援対象先である中小企業との関係性の深化、②先述した第Ⅲ象限にある中小企業(=企業規模や財務状況の脆弱性が顕著)支援に対するインセンティブ付与等の諸施策の励行、等が指摘された。また、支援機関に対し、M&Aはネガティブなイメージと異なり、自社の成長戦略や生産性向上に直結し、より強い企業の誕生による地域経済の活性化に寄与する旨の徹底的な告知が重要であることも補足された。■中小企業の事業承継支援における「相互理解」の重要性 各位の報告、及びパネルディスカッションから、事業承継支援における中小企業に対する支援機関との関係性深化の必要性を踏まえると、地道な対話の蓄積による「相互理解」の重要度が改めて確認された。生産年齢人口の減少、それにともなう人手不足、ひいては後継者不在、さらには事業承継難等の社会問題化した現実(=課題)に直面する我々は、容易に「効率性(≒生産性向上)」を求める傾向が強まる蓋然性は否定できない。しかし、敢えて「非効率性」という特性を帯びた“対話”という、手間のかかるコミュニケーション手法が、課題解決に向けた「(逆説的に)最も効率的な」解なのであろうと思料する。よって、親族内承継・従業員承継・M&A等の多様な事業承継(形態)において、我々中小企業診断士(支援機関)は、常に当事者間に介在し、コミュニケーションという機能をもった「調整弁」として、その円滑化に資する役割を果たす使命がある、との認識に至ったシンポジウムであった。日本経済が、日本国民が立ち往生する前に、喫緊に着手を要する中小企業の事業承継支援への理解を深める貴重な機会に立ち会えたことに謝意を示したい。喫緊の課題である「大廃業時代の中小企業支援のあり方」  シンポジウムに70名程の参加者が来場

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