cuc_V&V_第52号
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1352「環境と倫理」講義を通じた倫理教育の実践例千葉商科大学基盤教育機構 准教授田中 信一郎TANAKA Shinichiroプロフィール明治大学大学院政治経済学研究科博士後期課程修了、博士(政治学)。国会議員政策秘書、横浜市、内閣官房、長野県、自然エネルギー財団等を経て2019年度より現職。主な著書に『国家方針を転換する決定的十年』(現代書館)、『信州はエネルギーシフトする』(築地書館)など。はじめに1筆者は、2019年度の基盤教育機構の発足に伴って千葉商科大学の教員として採用され、同年度と翌2020年度に「環境と倫理」講義(春学期・秋学期1コマずつ)を担当した。専門は公共政策で、採用されるまで国会、行政(国・自治体)、シンクタンクで、環境政策等の政策形成実務に携わってきた。また、大学院在学時は、学内の公共政策系の研究所でRAとして勤務し、政策決定過程に関する学位論文を執筆した。本学では「環境と倫理」の他に「経済と社会」「政治学入門」「地球環境論」「日本政治史」等を担当している。本稿では「環境と倫理」講義について、どのような考え方で、どのように実施したのか、事例を紹介する。倫理を標榜する点で、一般的な環境学や地球環境等の講義とどのように異なるのか、明らかにする。加えて、学生の反応も明らかにする。なお、遠隔講義の反省と改善点も示したいため、2020年度の遠隔講義(秋学期)を事例とする。新型コロナウイルスの感染拡大を防止するため、本学からの指示に基づき、年度直前に講義方式を遠隔に切り替えた。全国の大学教員有志によるSNSに参加し、様々な方式を検討したが、反省点は多くある。そこで、翌年度のオンライン講義における改善点も含め紹介する。講義における「倫理」の定義2シラバスを執筆する時点で、最初に必要となったのが講義における「倫理」の定義である。講義の内容はもちろんのこと、最終課題に至るまで、講義全体を貫くコンセプトになるからである。これが曖昧では、適切な講義を企画できない。本講義では「環境に関する言動の判断の源」と「倫理」を定義した。受講生が、環境に関して何かしらの発言や行動をする(しない)際、自分なりの価値基準を踏まえ、論理的な判断ができるようになることを目指した。それは、学生としてかも知れないし、働き手としてかも知れないし、市民としてかも知れない。どのような立場であったとしても、自ら考えて判断するための、受講生なりの出発点を「倫理」と定義した。定義に際しては、基盤教育機構のカリキュラム・ポリシーを踏まえている。カリキュラム・ポリシーは「現実社会の諸問題を発見し分析する上で基盤となる知識や方法を身につけ、豊かな人間性と幅広い視野にもとづき、高い倫理観をもってものごとを判断する力を育む」と、倫理を「ものごとを判断する力」と位置づけている。「環境と倫理」であれば、環境に関する「判断する力」となる。特 集CUCの倫理教育特 集CUCの倫理教育

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