cuc_V&V_第52号
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22イバシー、人工知能の基本的な考え方と社会問題・倫理問題などに関する事柄などに分けられる。本稿では、この授業の内容を紹介し、我々がこの授業から何を学べるかについて論ずることにする。質問に答える2森博嗣の工学に関する初学者向けの授業のやり方は、推理小説作家だけあって少し変わっている。毎回学生に質問を提出させ、それを次の回の授業で、質問と回答とをA4用紙1枚にまとめて配付するという方法である。これをまとめたのが(森 2001)の新書であるが、その内容は多岐にわたっていて結構おもしろい。受講生の質問内容については、いっさい制約をつけていないために、新書に収録できる程度にバラエティとウィットにとんだものになっているのである。なかばやぶれかぶれで、私はこの方法を採用し、毎回の授業の最初の20-30分を質問の回答に充てることにした。これは結果的に、コロナ対応の遠隔授業と比較的相性がよく思い通りに内容を説明することが可能となった。たとえば、今年度前期のオンデマンドを含む遠隔授業には毎回100名前後の出席者がいるので、すべての質問に答えることはできない。そこで、取捨選択することにはなるが、ここで、私の想定する授業のストーリーに誘導することができる。ちなみに、2021年度春学期の場合、この質問集は、1学期分の授業で、18,000字程度の量になった。この程度の分量になると、最近のテキスト情報分析ソフトにかけると興味深い情報が得られることもある。それを試みたのが図1のワードクラウド表現である。この作成には、フリーのテキストマイニングツールUser Localを利用している(User Local 2021)。図1で、大きな文字で表現されているのが質問文中に現れる重要な単語を意味し、関連性の強い単語が近くになるように配置される。また、名詞がより中心に、動詞と形容詞が周辺に配置される。私の授業の内容に影響されているため、AI、人工知能、ソーシャルメディア、社会、職業、責任などの単語が大きく取り上げられている。表1に授業の最初のころの質問例を、表2に最後の授業に対応する質問例を掲げる。表1には、これが授業の質問かと思われるようなものもあるが、これが森博嗣の流儀なのである。授業にはエンターテインメントの要素が必要である。表1の比較的ナイーブな質問内容が、表2では現代の情報社会を反映した高度な内容に変わっているのがおわかりいただけると思う。最終回の授業では、図1と表2とを受講生に提示し、どの質問に答えてほしいかのアンケートをとり、要望の多い順に時間の許す限り、回答する。もちろん、すべての質問に丁寧に答えているともう半期分の授業が必要となる。回答時間が足りなくなるので、あとは必要に応じて個別に答えることになる。図1 受講者が提出したすべての質問をテキスト分析して得られたワードクラウド表現52特 集CUCの倫理教育

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