cuc_V&V_第52号
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24図2. マンガケースとテキストケースの比較マンガケースを利用する学習の特長は、経験学習の題材としてマンガのストーリーを利用すること、討論を通じてマンガのコマに埋め込まれた状況に依存する情報に気づかせること、気づきと学習者のもつ経験とを融合させることにある。これによって、実践的な知識の使い方を習得させようというのが我々の接近法である。この方法は、さまざまなバックグラウンドをもつ参加者が主体的に学習を行う上で有用であるとの知見を得ている(Orita 2016)。以下で、2021年度春学期の授業の第4回と第12回で用いたマンガ教材の例を示す。どちらも20〜40ページで構成されるストーリーである。第4回のマンガは、高等学校の部活におけるトラブルにかかわる。悪気のない3人の主要人物が、SNSの利用の些細な間違いで大きな事件に発展する。3人の性格とSNSに対する態度について取りまとめてもらい、その上で、どのような対策をとれば事件が防げたかを議論してもらうストーリーである(図3)。第12回のマンガは、(規模が明示されていない)IT企業において、4名からなるチームが新たなSNSサービスを立ち上げ、その売り込みの過程で発生するトラブルを扱っている。主人公の女性社員のIT事業における組織内での位置づけを判断してもらい、トラブルの原因について考えてもらう内容である。このマンガストーリーは、もともと企業での管理職研修に利用することを目的に作成したものなので、大学初年度を中心とした受講者には少し荷が重い内容になっている(図4)。ふたつのマンガケースについて、学生諸君は興味をもって取り組んでくれ、ケースに関してさまざまな質問や感想が集まってくる。最近の学生の傾向ではあるが、以下のようなコメントが多くみられる。「このストーリーのこれからはどうなるのですか?」「正解は何ですか?」「実際にこんなケースに巻き込まれたら図3. 第4回授業で使用したマンガケースから52特 集CUCの倫理教育

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