cuc_V&V_第52号
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25怖いですが、対策はありますか?」。これらに対して、私は、「実際の社会活動やビジネス活動には正解はないのだから、自分なりに整合的な解釈ができればよい」と答えることにしている。もっとも、使用しているマンガケースは、ビジネススクールで用いられる多くのケースと同様に、中途半端な状況で終わるので、不満が出るのは当然なのであるが…新しい情報を取り入れる4本稿の最初に述べたように、情報と倫理にかかわる話題は、最近、急速に増加している。様々な社会的・技術的な事件が頻発する中で、受講者諸君とともにこのテーマについて考えることがますます必要になってきている。そこで、新鮮なサラダの材料が必要になるわけである。私は、日本経済新聞の「データの世紀」と「サイエンス記事」、ならびに、NHKの「クローズアップ現代」と「フェイクバスターズ」から講義の題材を得ることが多い。具体的な元資料が何であるかは本稿で明示しないが、取り上げたトピックのいくつかを以下で紹介する。まずは、気の毒ではあるが、ネット炎上に巻き込まれて自ら命を絶った木村花さんの事例は取り上げることにしている。この際、強調するのは、ネット炎上を引き起こしているユーザの多くは複数のIDを使い分けており、全体の1.5%未満が騒動のもとを作っているという事実である。もし、彼女がこの事実を知っていたら、自殺に追い込まれるようなことはなかったように思う。次に、知る権利とプライバシーの関連で、池袋でプリウスの暴走事故を引き起こした飯塚幸三氏のマスコミにおける扱いを題材とする。これについては、毎年、受講者の意見を聞いているが、今年度は、従来に比べて氏名の公開が妥当であるとの意見が多くなっている。事件の内容と裁判の様子が詳しく報道されるようになって、個人のプライバシーより知る権利のほうが優先し始めたせいだろうか?同様なコンテクストで、フォルクスワーゲン社の排ガス規制を逃れるためのソフトウェアの改竄も取り上げているが、こちらについては、工学者としての私の立場から、フォルクスワーゲンの技術者が改竄に協力したのは必ずしも思慮不足が原因ではないと述べている。第3に、個人のデジタルアイデンティティを守るためには、個人情報における匿名性の管理だけでは不十図4 第12回授業で使用したマンガケースから52特 集CUCの倫理教育

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