cuc_V&V_第52号
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27話題、「だしいりたまご」の話題が多い。私が興味をもつのは、課題2の回答である。多くのレポートの記述は平凡ではあるが、時々、私が思いもよらなかった素晴らしいものが見い出される。そのうちのいくつかを以下に示す:「あなたの子供には、いくつからSNSを利用させますか?その場合に、どのような制約を課しますか?また、どのような注意を与えますか?自分の意見の根拠を含めて示しなさい。」「インターネット上の匿名性のメリット、デメリットを踏まえて、今後どのようにインターネットと向き合っていくべきか、例を挙げて論じてください。」「今までのインターネットの使い方と、講義を受けた後のインターネットの使い方ではどのような変化が生じましたか?また、インターネット社会において自分や他人、社会を守るためにどのような行動をしますか?」まったく若い学生諸君の発想の豊かさに驚かされる次第である。おわりに6本稿では、私が手探りの状況で開始した「情報と倫理」の授業について、これまでの経験を取りまとめた。改めて思い出して整理してみると、学生諸君から実にたくさんのことを学ばせていただいた。本稿で触れたような話題は、私自身の研究の幅を広げ、新たな研究テーマになりつつある。授業に参加された受講生のみなさんに感謝する次第である。実際のところ、私が授業を進めていく間にも、この領域での研究の進展は著しい。その一部は、村田等の『情報倫理入門』のテキスト(村田2021)、AIの倫理に深く関連した中川のテキスト(中川2019)、ネットリスクの軽減を目指した鳥海等の研究(鳥海2020)にまとめられている。これらの内容はまだ私の授業には反映されていないが、今後のますますの発展を期待したい。最後に「情報と倫理」の授業を進めるにあたって、副資料「あなたがあなたであるために」と「情報倫理入門」のテキストを提供していただいた明治大学・村田潔先生、ならびに、2つのマンガ教材を提供いただき、その使い方を伝授いただいたかつての共同研究者である関東学院大学・折田明子先生に感謝の意を表して、本稿の結びとする。小島正美(編著)(2018): 『情報社会のデジタルメディアとリテラシー-情報倫理を学ぶ-(第3版)』. ムイスリ出版.情報教育研究会(IEC)・情報倫理教育研究グループ(2018):『インターネット社会を生きるための情報倫理 改訂版』.実教出版.山口高平, 中谷多哉子 (2020): 『AIシステムと人・社会との関係』.NHK出版.明治大学ビジネス情報倫理研究所(2012):『あなたがあなたであるためにー自分のデジタルアイデンティティをどのように守るのかー』. http://www.isc.meiji.ac.jp/~ethicj/Keeping%20Your%20Identity%20True%20to%20You%20JH&H.pdf (2021年8月閲覧).森博嗣(2001): 『臨機応答・変問自在―森助教授vs理系大学生―』. 集英社新書.User Local (2021): 「User Local AI テキストマイニング」. https://textmining.userlocal.jp/ (2021年8月閲覧).竹内伸一(著), 高木晴夫(監)(2010): 『ケースメソッド教授法入門―理論・技法・演習・ココロ』.慶應義塾大学出版会. 吉川厚 (2007):「獲得した知識を活用するトレーニング: Situated Intelligence Training」. 『システム/情報/制御』, Vol. 51、No. 2,pp.102-108.寺野隆雄, 吉川厚, 山本秀男, 折田明子, 小川美香子(2010): 「マンガで学ぶビジネス-海外ワークショップ報告-」. 『日本科学教育学会第34 回年会予稿集』, pp.165-166.Orita, Akiko, Yoshikawa, Atsushi, Terano, Takao (2016):   MANGA-Case Training  for Global Service Science. in Kwan, Stephen K., Spohrer, James C., Sawatani, Yuriko, (Eds.): Global Perspectives on Service Science: Japan, Springer, pp. 293-312.寺野隆雄 (2019):「人工知能研究の過去・現在・未来‐人工知能から人口知能へ」. 『物理学会誌』, Vol.74, No.7, pp.454-462.長沼伸一郎(2020):『現代経済学の直観的方法』.講談社.崎村夏彦(2021):『デジタルアイデンティティ―』.日経BP社.Mark Coeckelbergh(2020): AI Ethics. MIT Press, 2020. (直江清隆(他)(2020):『AIの倫理学』. 丸善出版.)久木田水生、神崎宣次、佐々木拓 (2017): 『ロボットからの倫理学入門』. 名古屋大学出版会.Peter Scott-Morgan (2021): Peter 2.0: The Human Cyborg. Michael Joseph. (藤田美菜子(訳)(2021):『Neo Human ネオ・ヒューマン:究極の自由を得る未来』. 東洋経済新報社.)村田潔, 折戸洋子(2021): 『情報倫理入門-ICT社会におけるウェルビーイングの探求』. ミネルヴァ書房.中川裕志(2019):『裏側から視るAI 脅威・歴史・倫理』. 近代科学社.鳥海不二夫(2020):『未成年者のネットリスクを軽減する社会システムの構築-令和元(2019)年度研究開発実施報告書-』. JST/RISTEX戦略的創造研究推進事業. https://www.jst.go.jp/ristex/funding/les/JST_1115150_17942500_2019_toriumi_YR.pdf (2021年8月閲覧).参考文献52特 集CUCの倫理教育

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