cuc_V&V_第52号
30/64

2852「倫理観」を測ること――学修成果の可視化をめぐる一つの難問千葉商科大学政策情報学部 准教授権 永詞GON Eijiプロフィール慶應義塾大学政策・メディア研究科博士課程修了(博士:政策・メディア)2012年〜2015年 千葉商科大学政策情報学部専任講師2015年より現職、専門は理論社会学、老年社会学、環境社会学はじめに1大学における学生の学習成果を把握する取り組みは、2008年12月の中央教育審議会答申「学士課程教育の構築に向けて」における教育の質保証の議論に端を発している。この答申では、学士の学位が、知識・能力の習得を証明するものとして高い透明性を持つための提言がなされており、2016年には各大学に「学位授与の方針(ディプロマ・ポリシー)」「教育課程編成・実施の方針(カリキュラム・ポリシー)」「入学者受入の方針(アドミッション・ポリシー)」の策定・公開が義務付けられた。背景には、グローバル化に伴い学士の質を国際的に標準化する必要が生じたことや、大学全入時代において教育の質に対するアカウンタビリティ確保が求められるようになったことなどがある。こうした学士課程改革の過程で大学が直面する課題の一つに、学生の「倫理観」をどのように評価するか、というものがあり、主にはディプロマ・ポリシーの策定と運用にあたって顕在化することになる。そもそも、ディプロマ・ポリシーの策定が必要とされたのは、それまでに大学が掲げてきた「学位授与の方針」の曖昧さが批判されたためである。個々の大学が掲げる教育研究上の目的や建学の精神は、総じて抽象的であり、学士課程で学生が身につけるべき学習成果を具体化・明確化していこうとする動向に照らしても曖昧であると言わざるを得ない。したがって、学位授与の方針として、教育課程の編成・実施や学修評価の在り方を律するものとは十分になり得ていない(中央教育審議会 2008:9)こうした指摘を踏まえれば、新しく設定されるディプロマ・ポリシーは、学士の学位に相応しい知識・能力の水準を設定し、それを測定・評価できるものでなければならない。学習成果を可視化する必要はここに生じる。その上で、決して少なくない数の大学が、可視化されるべき4年間の学習の成果として、知識や技術だけでなく、学生の「倫理観」を挙げている。例えば、千葉県内の国公私立大学の公式サイトに公開されているディプロマ・ポリシーの中で、「倫理」「倫理性」「倫理観」といった言葉を学位授与の要件に含めている大学は、全30大学中15校と半数、明確に「倫理」の記載がない場合でも、「優しさと温かみに満ちた、総合的な判断力(江戸川大学社会学部)」、「多様性を理解し尊重する姿勢(神田外語大学グローバル・リベラルアーツ学部)」、「良識及び思考力・判断力・表現力等、主体性を持って多様な人々と協働(千葉経済大学)」、「他者を思いやる協調性とともに、凛として生き抜いていくための確かな人間性(聖徳大学)」、「高い品性(麗沢大学)」など、その意味としては類似した内容が記特 集特 集CUCの倫理教育CUCの倫理教育

元のページ  ../index.html#30

このブックを見る