cuc_V&V_第52号
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5252トピックス終わりにエルキントンは2008年にパメラ・バーディガンと共に上梓した『クレイジーパワー26』において「今世界は多くの歴史的な問題に直面している。しかし、これらの問題にも適切なアプローチに臨めば計り知れない市場機会が創造される」と述べている。そうした市場を生み出す人々こそが社会起業家であるというのである。本稿においてはSDGsを「企業と社会」論の歴史的変遷を辿りながら比較検討し、現在に至る歴史的必然性を論証した。そして、こういった企業を取り巻く社会環境こそが企業の存立要件を整備し、企業そのものの成立、存続、成長を促す可能性を持つのである。しかし、T.フリードマンが示したようにCSR消極論による企業原理は現在もなお息づいている。こういったエルキントンの目指す経済、社会、環境といったトリプルボトムラインを促す持続可能な発展が多くの企業で導入されれば社会起業家が社会貢献を実現し、経済効果と相まって新たなイノベーションを誘発する可能性を持つのである。実際、CSR積極論を提唱したデイビスとブルームストロムの考え方はキャロルが考えたピラミッドモデルがT.フリードマンのCSR消極論まで含意し、エルキントンのトリプルボトムラインの持続可能な発展へと導かれていくのであった。それが一方で環境経営をも喚起させ、環境マネジメントの具現化が多くの企業で行われるようになっていくのである。現在わが国はSDGsとどのように対峙するかが問われ、その意味でCSRの考え方もEUとの連携の中で確実なものにしていこうと考えている。また、経済三団体はISO26000を多くの企業に促している。さらに、機関投資家らもESG投資に注目し、市場動向は持続可能な社会の構築へ目を向けている。その意味で、本稿で確認した企業と社会そして環境に対する社会からの圧力、またそれに伴う環境アセスメントさらには環境経営といった展開が持続可能な社会を誘発し、現在のSDGsを理解するうえで必要要件になるのであった。26ジョン・エルキントン、パメラ・ハーティガン『クレイジーパワー』(関根智美訳、英治出版、2008年)は、社会起業家の定義を述べているが、これは遠藤隆吉と治道家との類似性が高いため、今後の研究に社会起業家と治道家の関係を取り入れていきたい。図表3 トリプルボトムラインの離陸出所:Environics International※この表は、図表1の出所であるSustainAbility and UNEP (2002)に記載されている。

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