cuc_V&V_第52号
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4ビジネス倫理をどのように授業で扱うか 「商業と倫理」科目の概要千葉商科大学基盤教育機構 准教授手嶋 進TESHIMA Susumuプロフィール慶応義塾大学法学部政治学科卒。ロンドンビジネススクール経営学修士(MBA)。外資系コンサルティング会社勤務後、IT、Web解析、再生可能エネルギー事業開発など複数のベンチャー企業の取締役を歴任した後、2019年より現職。はじめに1千葉商科大学(本学)の前身である巣鴨高等商業学校の創設者である遠藤隆吉は、その建学の趣旨として有用の学術を修めること、また、実業家となるべき者に商業道徳を吹き込むことが必要であると述べている1。したがって、実学としての倫理教育を行うことは本学教員としての使命といえる。しかし、就業経験が少ない学生に実社会での仕事でどのように自分が倫理的意思決定に関わるのかを想像させるのは容易でなく、筆者が2019年4月から担当している「商業と倫理」の授業においてもその挑戦は続いている。本稿では筆者が行っている授業のねらい、概要、履修した学生の反応を紹介し、多くの方々からご批判やご意見を頂戴して今後の教育に生かしていきたい。科目「商業と倫理」の概要22.1 科目の位置付けと対象「商業と倫理」は基盤教育機構の一般教養科目に位置付けられており、2019年度以降に入学した全ての学部の学生が受講できる。2019年度の履修者は春学期31名、秋学期54名、2020年度はそれぞれ41名、44名、2021年度春学期は38名であった。全学部の学生がおり、卒業生の多様な就職先を考慮して、「商業と倫理」の対象範囲を広く捉え、ビジネス全般における倫理(ビジネス倫理)を対象としている。2.2 科目のねらい科目の最終的な目標は、学生が知識習得だけでなく、実際に仕事をするうえで倫理的意思決定を行い、最適と判断したことを行動できるようになることである。とはいえ教室では仕事をする環境は作れないので、授業においては、①日々の仕事での行動が倫理的判断と密接に関わっていると意識できること、②拙速な判断をせず状況を冷静に見極めて意思決定できること、③人々は多様な考えを持っており自分の考えだけが絶対的に正しいわけではないと認識できることの3つをねらいとしている。2.3 授業の構成(シラバスの概要)初回授業でアルバイト経験を尋ねると半数から3分の2ぐらいの学生があると回答するが、1年生の比率が高いこともあり、責任ある立場で働いた者は少ない。ビジネス上の倫理的課題を取り扱うといっても就業経験が浅い学生にとっては具体的にはイメージし難く、世の中で起こっている問題が自分とは関係ない遠い存在のものだと思っている傾向がある。そこで、初回授業において、2つのことを認識させるようにしている。一つはどのような企業においても不正や倫理的な問題が発生していること、つまり、学生が就職する会社においても不正等が発生する可能性が高いこと、も1千葉商科大学ウェブサイト, https://www.cuc.ac.jp/about_cuc/outline/spirits/index.html (閲覧日:2021年7月30日)特 集52特 集CUCの倫理教育CUCの倫理教育

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