cuc_V&V_第52号
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号の特集テーマは「CUCの倫理教育」とした。私自身は、かつて政策情報学部で行われていた「政策倫理」という科目を1度だけ(全15回のうち1回分だけ)担当したことがある。主担当者から依頼されたテーマは「エネルギー政策と倫理:福澤桃介と松永安左ヱ門の目指したもの」であった。副題に登場する2人はいずれも日本の電気事業の礎を築いた人物であり、元学長の加藤寛先生の遺作として刊行された『日本再生最終勧告』(ビジネス社)で詳しく紹介されていた。そこで、その内容を要約しつつ、現代の政策課題との関連性を解説したうえで、それを倫理という観点から考察するという展開を考えたのだが、実際には、この文脈における倫理とは何か、という論点をうまく整理することができなかったため、さらに細分化した複数の論点と情報を提示し、あとは学生に考えてもらう、という形にしたことを記憶している。 そんな消化不良感の残る授業ではあったが、福澤や松永の思想とその背景を知る貴重な機会ともなった。また、戦後の九電力体制にもつながるという『電力統制私見』を松永が発表したのが、本学の創立と同じ1928年(昭和3年)であるということにも興味を惹かれた。あの時代に遠藤隆吉先生はどのような思いで本学の前身である巣鴨高等商業学校を設立されたのだろうか。また、その設立趣意書のなかには、「商業道徳の頽廃」が「外国貿易の不振」を招いたとも読める記述があるが、それはどのような背景のもとで書かれたものなのか。本号の巻頭言で朽木学部長が、特集内の論考で枡岡講師が、各々の観点から遠藤先生の思想について理解を深めることの意義を述べているが、是非ともそのような研究を進めてほしいものである。[No.52]61編集後記千葉商科大学政策情報学部教授 経済研究所長小林 航本号の特集テーマは「CUCの倫理教育」とした。私自身は、かつて政策情報学部で行われていた「政策倫理」という科目を1度だけ(全15回のうち1回分だけ)担当したことがある。主担当者から依頼されたテーマは「エネルギー政策と倫理:福澤桃介と松永安左ヱ門の目指したもの」であった。副題に登場する2人はいずれも日本の電気事業の礎を築いた人物であり、元学長の加藤寛先生の遺作として刊行された『日本再生最終勧告』(ビジネス社)で詳しく紹介されていた。そこで、その内容を要約しつつ、現代の政策課題との関連性を解説したうえで、それを倫理という観点から考察するという展開を考えたのだが、実際には、この文脈における倫理とは何か、という論点をうまく整理することができなかったため、さらに細分化した複数の論点と情報を提示し、あとは学生に考えてもらう、という形にしたことを記憶している。 そんな消化不良感の残る授業ではあったが、福澤や松永の思想とその背景を知る貴重な機会ともなった。また、戦後の九電力体制にもつながるという『電力統制私見』を松永が発表したのが、本学の創立と同じ1928年(昭和3年)であるということにも興味を惹かれた。あの時代に遠藤隆吉先生はどのような思いで本学の前身である巣鴨高等商業学校を設立されたのだろうか。また、その設立趣意書のなかには、「商業道徳の頽廃」が「外国貿易の不振」を招いたとも読める記述があるが、それはどのような背景のもとで書かれたものなのか。本号の巻頭言で朽木学部長が、特集内の論考で枡岡講師が、各々の観点から遠藤先生の思想について理解を深めることの意義を述べているが、是非ともそのような研究を進めてほしいものである。[No.52]61編集後記千葉商科大学政策情報学部教授 経済研究所長小林 航本

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