cuc_V&V_第53号
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2353準とは、因子を質的や量的に変える場合の各段階のことである。例えば、農業実験においては、作物の収量が特性値、肥料や殺虫剤が因子、それらの種類や量が水準となる。さらに、肥料による効果や殺虫剤による効果が主効果、肥料と殺虫剤の組み合わせによる効果が交互作用となる。実験計画法の目的は、因子の一番良い水準を見極めるために、効率的に実験を行うことといえる。そのために、Fisherの3原則と呼ばれる「繰り返し(replication)」、 「無作為化(randomization)」、「局所管理(local control)」に基づいて実験が設計される。繰り返しとは、同一実験処理を複数回実施することである。1回の測定では、その結果が水準の違いによるものか、誤差によるものかを判別できない。しかし、同じ実験を2回以上実施することにより、同一実験処理内のばらつきに関する情報を得ることができるため、実験で生じる誤差の大きさを評価することができる。無作為化とは、実験処理を実験単位に無作為に割り当てることである。誤差には偶然誤差と系統誤差がある。系統誤差とは、実験の設備、環境、条件(農業実験においては、地域環境、農園環境など)によって引き起こされるような、一方的な偏りを生じさせるような誤差である。無作為化を行うことで、系統誤差を偶然誤差に転化させることができる。局所管理とは、実験全体を複数のブロックに分割することである。処理や反復が多い場合は無作為化だけでは系統誤差が大きくなる可能性があるが、分割されたブロック内では実験環境が均一となり、系統誤差を取り除くことができる。1つの因子を取り上げて、3つ以上の母集団を想定して、母平均が一様に等しいかどうかの検定や、最適水準における母平均の推定を行う方法を一元配置法と呼ぶ。一方、2つの因子を同時に取り上げる場合には、二元配置法を用いる。さらに、同時に取り上げる因子の数が複数のものは、多元配置法と総称される。多元配置法の場合は、交互作用は評価することができる。実験計画法では、分散分析による評価を行う。分散分析では、データのばらつき(総平方和)を、「水準の違いに起因するばらつき(水準間平方和)」と「誤差に起因するばらつき(誤差平方和)」に分解する。そして、要因効果の平方和が誤差平方和に対して有意かどうかをF検定により判断する。F値(水準間分散の誤差分散に対する比)が十分に大きければ、水準の違いに起ここで、「X001」を構成している品目「D001」は、「J001」と「S001」を子品目としている。しかし、仕様変更の発生により製品構成が変化するため、品目名をそのまま「D001」とすることができず、「D002」などのように品目名を変えて、区別する必要がある。このように、構成マスタの親子関係により製品構成を表現するBOMでは、子品目で仕様変更が発生した際には、それに伴い親品目名を変更しなければならない。さらに、品目「D001」が「D002」に変化したことにより、その親品目にあたる「A001」も、「A002」などのように品目名を変えて、区別する必要がある。その結果、図4の太枠で示されるように、変更される品目から上位に辿り、最終的な品目(製品)に至るまで、それらの親にあたるすべての品目の品目名(品目コードも含む)を変更する必要がある。そして、各品目名が変化したことにより、新たに親子関係を登録し直す必要が発生する。こうした多仕様化への対応は、BOMに関するデータ管理を複雑にし、様々な弊害をもたらす懸念がある。構成マスタを作成する際には、製品構成の構造そのものの誤り、製品構成内で類似した下位品目を選択してしまう誤り、変更されていなければならない品目が変更されていないという変更漏れの誤りなど、様々な誤りに注意する必要がある。そのため、品目間の親子関係の不整合に基づくこれらの誤りに注意をしつつ、短納期の中で構成マスタを作成する必要がある。従来研究の紹介33.1 実験計画法本節では、以降で示す(横山、平野 2018a) 、 (横山、平野 2018b)で用いられている実験計画法(Design of Experiments:DoE)について説明する。実験計画法とは、イギリスのR.A.フィッシャーが1920年代に農業実験の実施から着想して発展させた方法で、効率的に情報を得るための実験方法を設計するための統計学の応用技術の総称である。まず、因子や水準について説明する。因子とは、実験の目的となる特性値に影響を与えると想定している原因のことである。因子による効果を要因という。要因には、各因子の水準が変わることで生じる主効果と複数の因子の組み合わせで生じる交互作用がある。水特 集社会科学におけるデータ分析

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