cuc_V&V_第53号
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2453要因を明らかにしている。レビュー作業とは、一通り作成し終えた構成マスタを複数人で確認し、あらゆる誤りを発見して修正を行う作業である。レビュー作業は、構成マスタの作成において人的要因の影響が大きく、重要な作業である。また、レビュー作業は機械化が難しく、人手による作業となり、レビュー作業での誤りの見逃しや誤った修正(これらを以下、「レビューミス」と記す)に対して人的要因の影響は大きい。レビューミスの発生につながる人的要因の複雑な構造に取り組むために、人的要因の影響が人的なミスの発生へ直接的もしくは間接的に関係しているという枠組みを与えて、素因と誘因という2つの属性からなる二重構造のモデルが仮定されている(影山、木村、山田、高橋 1998)(江崎、山田、高橋 2001)(山田、松田 2003)。素因とは、人間の行動に直接影響を与え、人的なミスの発生への直接的な原因となるものとされている。誘因とは、素因の影響を調整し、人的なミス発生の原因の間接的な影響を与えるものとされている。(横山、平野 2018a)においては、素因を「個人の注意力や集中力」と「構成マスタ作成に関する理解」、誘因を「品目コードの複雑さ」、「レビュー作業の時間」、「任意の追加作業の有無」と仮定している。そして、(横山、平野 2018a)では、レビュー作業の実験を通じて、レビューミスを誘発する要因を分析している。実験では、品目コード上に親子関係の誤りが埋め込まれた構成マスタを被験者に提示し、誤りの箇所を探し、修正してもらう方法が採用されている。実験用の構成マスタの中には、図3や図4で示されるような、複数の仕様を持つ品目が存在している際に構成マスタ上の品目コードが正しい親子関係に基づいた適切なものになっていない誤りが意図的に埋め込まれている。なお、実験で素因に仮定した「個人の注意力や集中力」については、一様であるものと仮定されている。同じく素因に仮定した「構成マスタ作成に関する理解」については、事前に構成マスタ作成に関するテストが実施され、評価の高い被験者の群と評価の低い被験者の群に分け、それぞれに対して実験が行われている。さらに、「レビュー作業の時間」については、事前にテストデータによって被験者の能力を把握し、レビューに適切な制限時間が見積もられている。その結果、レビュー作業の制限時間を20分と25分の2種類を用意されている。また、「品目コードの複雑さ」に因するばらつきによる影響が誤差に起因するばらつきよりも十分に大きいことになる。つまり、偶然の誤差によって違いがもたらされている確率は極めて低いことになり、実験で制御されている要因による影響で違いが表れていると統計的に結論づけることができる。また、取り上げた因子の水準のすべての組み合わせを実施するものを完全実施要因計画といい、一部の組み合わせしか実施しないものを一部実施要因計画という。例えば、因子A(4水準)と因子B(3水準)を 取り上げた二元配置法を考えると、それぞれの水準組合せで2回実験するならば、4×3×2=24回の実験を行う必要がある。実験回数は、同時に取り上げたい水準や因子の数が増えれば、それに伴い増大する。例えば、5個の因子を同時に取り上げ、それぞれを3水準にすれば、繰り返し数が1回であっても、3×3×3×3×3=243回の実験が必要となる(永田 2000)。そこで、実験回数を減らして、効率的に情報を得るための各水準の組み合わせを決定する際に直交表(直交配列表)を利用する。直交表とは、実験回数を減らしても主効果と交互作用の有無を検定するためには、どのような水準組合せを選んで実験すればよいかを確認することができる道具である。(横山、平野 2018a)では2水準系のL16直交表が、(横山、平野 2018b)では 2水準系のL8直交表(図5に示す)がそれぞれ用いられている。図5 2水準系のL8直交表3.2 レビュー作業の人的なミスに関する研究(横山、平野 2018a)では、BOMにより複雑な製品構成を表現する際の製品や部品の親子関係の不整合に基づく誤りに着目し、作成した構成マスタのレビュー作業の際に誤りを見逃す人的なミスの発生を誘引する特 集社会科学におけるデータ分析

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