cuc_V&V_第53号
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2553したことから、誘因には「チェックボックスの有無」、 「末端品目に対する印の有無」、「作業の中断の有無」が仮定されている。そして、(横山、平野 2018b)では、被験者が構成マスタの作成作業を行う実験を通じて、作業の質と量に影響する要因が分析されている。実験のために、複数種類の下位品目から構成された抽象的な製品が想定され、ある1つの品目を親とした際の全ての子品目との親子関係の組が示されたデータが用意されている。実験では、品目の種別の情報が空白になっており、この部分を記入していく形で、被験者に構成マスタを作成してもらっている。 さらに、構成マスタの構造により、構成マスタの入力作業に影響するものと考えられる。そこで、(横山、平野 2018b)では、製品の下位品目の数が多く階層が浅い場合と、下位品目の数が少なく階層が深い場合の二種類の構成マスタが用意されている。なお、構成マスタの構造は対象となる製品により与えられるものであるため、制御が可能な要因ではない。素因に仮定した「個人の注意力や集中力」については、(横山、平野 2018a)と同様に、一様であるものと仮定されている。また、「構成マスタ作成に関する理解」についても、事前に構成マスタ作成に関するテストを実施し、その評価の高い被験者のみを実験対象とされている。そして、 3つの因子(素因と誘因)「作業の中断の有無」「チェックボックスの有無」「末端品目に対する印の有無」を2水準のL8直交表に割り付け、8つの各組み合わせで3人ずつの計24名の被験者に対して実験が行われている。分散分析の結果、構成マスタの階層が深くなると、「末端品目に対する印の有無」が正しい構成マスタの作成数に対して良い影響を与えることが明らかにされている。また、「チェックボックスの有無」に関しては実験からはその有効性を確認されなかった。これは、チェックボックスの記入や確認作業自体にも時間を要するため、(横山、平野 2018b)の実験の構成マスタの作成に対しては適さなかったものと考察されている。今後の展望4今後も、より詳細な分析を行うことで、実際の生産ついては、品目コードの表記方法が2パターン用意されている。さらに、「任意の追加作業の有無」については、親子関係の誤りとは別に、親子関係とは無関係な品目コードについての誤りが埋め込まれており、親子関係の誤りのレビュー作業のみに集中する場合と、それ以外の独立した誤りについても気が付いた範囲内で指摘する追加作業を設けた場合が用意されている。 以上のように、4つの因子(素因と誘因)である「構成マスタ作成に関する理解」、「品目コードの複雑さ」、「任意の追加作業」、「レビュー作業の時間」が2水準のL16直交表に割り付けられ、各組み合わせで3人ずつの計48名の被験者に対して実験が行われている。分散分析の結果、レビューミスの発生に対しては、「構成マスタ作成に関する理解」が大きく影響し、さらに「構成マスタ作成に関する理解」が低い場合には、「品目コードの複雑さ」が存在することによりレビューミスがより多く発生してしまうことが明らかにされている。さらに、BOMの構成マスタ作成における特有のミスといえる品目間の親子関係の誤りに着目し、親子関係を正しく把握する能力が求められるレビュー作業のみを分析した結果では、「構成マスタ作成に関する理解」や「品目コードの複雑さ」の他に、「任意の追加作業」や「レビュー作業の時間」といった要因が有意であることが明らかにされている。 3.3 構成マスタ作成の作業に関する研究(横山、平野 2018b)では、構成マスタの作成作業そのものに着目し、構成マスタ作成の作業の質と量に影響する要因を明らかにしている。(横山、平野 2018b)においても、(横山、平野 2018a)で用いられた素因と誘因の二重構造のモデルの枠組みを適用している。構成マスタ作成の作業の質と量に対する素因を、「個人の注意力や集中力」と「構成マスタ作成に関する理解」と仮定されている。一方、あらかじめ仕様変更がされる品目とされない品目を識別した後に品目コードを付ける作業に取り掛かる様にした方が、構成マスタを作成し易くなるものと考えられる。また、構成マスタの構造の把握が助けられることによっても、作成し易くなるものと考えられる。さらに、その作業に集中できる環境で作業をするのか、作業の中断により集中力が途切れるような環境で作業するのかでは、構成マスタ作成の効率が異なるものと考えられる。こう特 集社会科学におけるデータ分析

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