cuc_V&V_第53号
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2753千葉商科大学政策情報学部 助教戸川 和成TOGAWA Kazunariプロフィール1993年(平成5年)3月23日生まれ。2019年(平成31年)筑波大学大学院人文社会科学研究科(国際日本研究専攻)博士後期課程早期修了。2019年(平成31年)博士(社会科学)(筑波大学)を取得。専門はソーシャル・キャピタル論、公共政策論。著書に『ソーシャル・キャピタル叢書第5巻 ソーシャル・キャピタルと市民社会・政治』(共著/ミネルヴァ書房、2章を担当)、『現代日本の比較都市ガバナンス・市民社会』(共著/木鐸社、5章・6章・10章を担当)、『ソーシャル・キャピタルからみた人間関係―社会関係資本の光と影 (生存科学叢書)』(共著/日本評論社、6章を担当)。『AIはどのように社会を変えるか―ソーシャル・キャピタルと格差の視点から』(共著/東京大学出版会、1章・9章を担当)混合研究法に基づくポスト・コロナ時代の都市政策とソーシャル・キャピタル地域社会運営の効率性を改善するしくみを解明する研究アプローチ(2)浮き彫りにされた共助意識の停滞と都市内住民の認識のズレしかし、災害時に求められる社会関係資本は地域社会を見渡してみると疲弊してきている。明るい選挙推進協会が調査してきた市民の組織加入率をみると、 自治会・町内会をはじめとした組織への加入率が減少している(辻中・和嶋・戸川 2019)。それは組織力の停滞が活動している人々への運営負担を大きくし、活動の維持を難しくさせてしまう。一方で、自治会・町内会に対しては、「加入率の減少」や、「自治会・町内会の不要論」という問題が指摘され1、地域をよくみるとコミュニティを支える活動主体(担い手)と非活動主体(傍観者)の間には地域活動への認識に差異が生じている。さらに、コロナ禍という感染の脅威が人々の不安と不信を蔓延させているとなれば、対面の人間関係を念頭に置いた社会関係資本を毀損し、創意工夫に基づく連携と協働のまちづくりを衰退させてしまうのではないだろうか。(3)ポスト・コロナ時代の持続的な地域社会運営のしくみを考えるどのように組織を運営すればコロナ禍に上手く機能しえるのか。どのような《社会》の再構築を目指すことで、地域コミュニティ内の活動への認識のズレを無くし、地域の担い手を増やすことができるのか。本研究は自治会・町内会の組織運営をもとに、ポスト・コロナ時代に求められる持続可能な地域社会運営に必要なしくみを社会関係資本論の観点から明らかにする。具体的には量的/質的研究を組み合わせた混合研究法の研究デザインを構築する。コロナ禍に問われるソーシャル・キャピタルの社会的文脈に関する研究1(1)コロナ禍の緊急事態宣言を補完するソーシャル・キャピタル日本は法律上の強制力を使い、私権を制限する政策とは異なる、市民の自発的協力行動に依存した緊急事態宣言を発令した。政府は広い意味での「法的規制」や「行政指導」を駆使するが、「なぜ、弱い規制にもかかわらず、他国と比べて引けを取らないほどの自粛が日本では可能なのか」、という問題には社会に浸透した「信頼・互酬性の規範・ネットワーク(つきあいや団体参加)」というソーシャル・キャピタル(Social Capital。以下、本文中は社会関係資本と表記。)が関わっていたようにみえる。すなわち、身内を感染させないよう、社会関係資本を成員同士で共有し、社会の逸脱行動を避けるよう、人々が自分たちを自主的に規律付けることによって、その行動変容を成しえたのではないか。1日本経済新聞記事(2020)、「コロナ禍で変わる町内会 IT化で加入促進、再生の契機に」、2020年6月27日、https://www.nikkei.com/article/DGXMZ O60834490W0A620C2KNTP00/(アクセス日:2020年11月19日)に依拠している。特 集社会科学におけるデータ分析特 集社会科学におけるデータ分析

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