cuc_V&V_第53号
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2953質的分析には、参与・観察して得た証言を逐語録として作成し、それをデータとして鍵概念に落とし込んだ後、テーマに関連付けてコード化するなど、様々な手法を組み合わせた収集・分析方法がある。混合研究法では、探索的 順次デザインによって、質的研究から得られた知見をもとに、さらなる仮説検証に必要な研究枠組みを設定する。そして、次の量的研究段階につなげて、研究の統合を実現させようとする(ジョンソン・フェターズ2016:7-8)。筆者は、後述するように、戸川(2021a)によって、本研究の問題意識に設定した自治会運営に関する問題をソーシャル・キャピタル論の視点から提起している。それは東京都葛飾区新小岩第四自治会を対象に実施した参与観察(研究代表:関東学院大学小山弘美研究室)にもとづいている。混合研究法に基づく実証研究33.1説明的順次デザイン-ケース・スタディ:千葉県鎌ケ谷市の研究を例として(1)方法とデザイン筆者はコロナ禍の危機に直面し、市民団体の活動を継続ないし再始動しえる方法を検討するべく、鎌ケ谷マネジメントラボ(任意団体、代表:甲斐貴子氏)が鎌ケ谷市と共催で実施した「新型コロナ・ウイルス感染症により、影響を受けた市民活動団体・自治会・サークル等のアンケート調査」に関する研究に携わった。さらに、2021年1月から2021年7月にかけ、上述のアンケート調査および地域団体や各組織に必要な中間支援策の在り方を検討するヒアリング調査研究に加わった。図3は、その研究プロジェクトの概要を混合研究法の研究デザインに合わせてまとめた表である。【第1段階:量的】研究のデータは、そのアンケート調査をもとにしており、鎌ケ谷市で活動する333団体(うち自治会は23団体)に配布し、213団体から回答を得た(回収率:63.9%)。質問票には団体リーダーの運営意識の変化設問や、それに関わる地域社会状況の変化を把握する設問を新たに作成した。その記述統計を踏まえた上で、戸川(2021c)は地域社会を担う団体活動を支援するには、「オンライン技術の導入」方法と「会員間のつながりづくり」の確保に取り組む必要があることや、若年層と高年層の活動再開に対する認識のずれやオンライン技術の活用スキて精緻化するという「順序的手順」がある(亀井 2021: 68)。そのうち、河村(2021:28)によれば、主に「量的 →質的の順序、また量的段階が中心に位置づけられ」る研究デザインが説明的順次デザインと呼ばれる。図1 はその研究プロセスを可視化したものである。図1 説明的順次デザインそれによれば、説明的順次デザインでは最初に量的データの収集と分析が行われる。そして、その結果を理解するために質的研究のデザインが新たに構築される。それは量的段階の調査研究と分析結果の理解を深めるためである。筆者は、次節に後述する説明的順次デザインを千葉県鎌ケ谷市の事例研究に利用して、コロナ禍の自治会運営の状況を明らかにした。その具体的な調査研究の実施概要と実証研究の結果は次節のとおりである。(2)探索的順次デザイン図2は探索的順次デザインを可視化したものである。稲葉(2021:39)によれば、探索的順次デザインとは、さきほどの量的研究から始まるのではなく、質的アプロ―チに基づくリサーチ・クエスチョンの設定から始まる。図2 探索的順次デザイン特 集社会科学におけるデータ分析

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