cuc_V&V_第53号
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3153支えられていたことがみて取れよう。また、近隣住民の間で「助け合いの規範(多くの場 合、近隣の人は他人の役に立とうとすると思う)」が共有されているほど、運営意識は前向きである傾向が示されている。さらに、A連合自治会では活動に住民の理解を得られないことが活動の自粛に結びついている。それに対し、B単位自治会では、活動に寛容な住民に囲まれているので、活動の再開を心配せずとも安心して活動を継続しえる要素に働いていた可能性がある。以上のことを踏まえると、「コロナ禍の危機に直面した中では、運営内外の住民と役員が危機という境遇を同時に共有し、仲間内のネットワークが結束型社会関係資本を醸成する結果、団体リーダーの運営意識が停滞することなく継続しえている」という仮説が得られよう。(3)コロナ禍の非常時を下支えする結束型社会関係資本の効果筆者は、上述の仮説を検証するために、「運営意識の変化」と「地域の結束型社会関係資本」に関する変数を用いてパス解析を実施した。それは統計的手法をもとに、その基準に従って許容された変数間の因果関係や相関関係を矢印で結ぶダイアグラムをいう。以下の図4はそのパス図を示す。(2)コロナ禍の運営意識の変化に及ぼす結束型社会関係資本の影響仮説の導出両調査研究のデータを照合すると、表1に示すジョイント・ディスプレイ(Joint display)が作成された。ジョイント・ディスプレイとは、「量的・質的データをまとめて表示することでデータが何を示しているかについての理解を支援するツール」を指し、量的・質的データの双方を1つにまとめた表やグラフに可視化することができる(亀井 2016:69)。表1によれば、コロナ禍の運営意識の維持/停滞には「運営内部/外部」のネットワークに分けて醸成される結束型社会関係資本が重要な役割を果たしている。例えば、量的調査結果を踏まえると、「組織運営が難しく継続に危機を感じる」に対して該当する自治会ほど、運営意識は停滞傾向にある。これはA連合自治会とB単位自治会の証言結果と整合している。すなわち、コロナ禍においては活動に参加するメンバーの了解を得られる範囲で、必要な清掃活動に対し、なるべく少人数のグループに分けて実施するなどの創意工夫が行われた。それは活動参加者の助け合いによって成立していた。加えて、それがリーダーの「やれることはやる」という意識を奮起させていたのだろう。すなわち、コロナ禍の危機に直面し、仲間内の相互信頼と協調行動が強化されることによって、団体リーダーの運営意識は図4 パス解析にもとづく知見の共有特 集社会科学におけるデータ分析

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