cuc_V&V_第53号
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3253は、2019年8月19日に小山弘美研究室(2019a)が 実施した「自治会活動参加状況調査(新小岩第四自治会)」研究に携わり、2020年3月にかけて、1年間の東京葛飾区の新小岩第四自治会の参与・観察を行った。そして、筆者は組織運営の課題を社会関係資本の視点から捉えようとし、図5の【第1段階:質的】の研究を行った。さらに、【第1段階:質的】から得た仮説が研究の対象範囲を拡げたとしても、妥当性を得られるのかを検証するために、上述の研究を東京23区にまで拡げた実証研究を計画した。それは図5の【第2段階:量的】研究に相当し、仮説を検証するために必要なアンケート調査を新たに実施した。それは2020年(令和2年)11月2日(月)~11月9日(月)の間に東京23区在住計2,300名の住民(Web登録モニター)を対象に行ったWeb調査、「地域を紡ぐ信頼、社会参加、暮らしの政策に関する調査」である4。本調査は社会関係資本の把握を目的とし、自治会組織の運営内部/外部に関する状況を調べている5。両方の調査研究を整理した結果、運営内部の組織構造には社会関係資本論から考えられる課題が活動メンバーの証言から得られ、似通った知見は東京23区の都市住民に関するWeb調査にも共通して確認された。それによれば、運営意識が明るい団体の特徴はコロナ禍においても「運営のしやすさ」を得ており、地域住民の助け合いや信頼・互酬性の規範(ご近所の利他愛や愛着心など)が豊かな地域の「結束型社会関係資本」(図中は地域SCと表記)が正に関係している。本研究のパス図を解釈すれば、コロナ禍においても「運営のしやすさ」を維持できる環境が必要であった可能性がある。それはメンバーが連携しやすいこと、後継が見つけられやすいような環境を指す。さらに、地域住民が活動に協力しやすい環境を整えなければ、単に自粛を要請するだけでは感染防止行動を喚起できるしくみが整うわけもなく、また、活動を妨げるような住民の厳しい目による監視意識を和らげることは難しいようにみえる。これは、コロナ禍の運営意識が結束型社会関係資本によって支えられていた可能性を示しており、仮説を支持する傾向を示唆していよう。3.2探索的順次デザイン-ケース・スタディ:葛飾区新小岩自治会の研究を例として(1)方法とデザイン次に、戸川(2021a)をもとにして日常から議論に上がる自治会・町内会運営の問題を指摘する。筆者 4本調査は「研究費番号:MHF2020-A006、ソーシャル・キャピタルの世代間継承が及ぼす都市ガバナンスのQOL改善に関する研究」(前川ヒトづくり財団 2020年度(一般枠))の助成を得て、また「21世紀・首都東京のQOLを持続的に向上しうる都市ガバナンスの実証研究」(千葉商科大学 戸川和成(政策情報学部 助教))によって実施している。その内容・形式については、千葉商科大学研究倫理委員会の審査を受審し、研究計画の承認を得ている(令和2年10月29日付承認番号20-01)。5母集団は23区在住のWeb登録モニター、各区部ほぼ100名(住民基本台帳に基づいた性別×年齢階層分布に応じて収集)を無作為抽出している。有効回答者の分布は住民基本台帳に基づいた東京23区在住の住民に関した性別別6年齢階層(世代別)分布と比較した上で、偏りがないことを確認している(戸川 2021b)。図5 研究計画―東京23区の自治会・町内会の研究に関する概要特 集社会科学におけるデータ分析

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