cuc_V&V_第53号
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3353の交流を可能にする風通し良い組織運営に関する仮説を打ち出せよう。仮説1:役員同士の関係だけでなく、運営組織を超えた他組織(NPOやボランティア)と一緒に活動している組織ほど、組織外部の橋渡し型社会関係資本が醸成されることで、活動の内容が地域の課題に対応しやすく、負担が軽減されやすい。仮説2:組織の運営内部では、様々な世代が参加し、役員を担う活動主体が固定化していないほど、橋渡し型社会関係資本が醸成される結果、若い世代や新規の人(外部の人)が気軽に参加しやすい。(3)仮説の検証―パス解析に基づく風通しのよい自治会運営の提言調査票のうち、自治会や地域活動の様子を読み取る設問から、「2.様々な世代が参加している(年齢差が20歳以上)」、「3.役員と一般のメンバーのつきあい・交流が盛んである」に対する5件尺度の意見(1.あてはまる~5.全くあてはまらない、以下の変数の尺度も同様)を使用し、仮説1・2に設定した自治会・町内会の運営内/外部の橋渡し型社会関係資本を測る指標を作成した。「11.地域の他の組織(NPOやボランティア)と一緒に活動している」は〈運営外部〉の「橋渡し型社会関係資本(他組織連携)」として利用した。〈運営内部〉の「結束型社会関係資本」には「1.ほぼ同じ世代(年齢層)が参加している」、「役員をやってくれそうなメンバーが固定化している」を利用した。(2)橋渡し型社会関係資本を醸成させた風通しのよい自治会運営に関する仮説の構築両調査研究のデータを照合すると、次の表2に示すジョイント・ディスプレイが作成された。野村(2020)が分析するように、高層住宅の整備が進み、30~40代のサラリーマン層の新来住民の流入が増えている地域では、活動を認知している人々が少ない可能性がある。また、役員の担い手の高齢化も生じているため、「担い手不足/分担が上手くいっていない」という事例が確認されている。さらに、旧来住民を中心に役員が務める中では、活動時間が既に決められている。そのため、慣れていない住民に対応していない限り、活動時間に都合を合わせられない新来住民は「時間が合わない」ことを参加しにくい理由に挙げる。また、役員から若年層の住民へ地道な声かけもおこなっているようであるが、既にコミュニティが構築されている中に若年層が入ることは難しいという証言も確認された。それは量的データの傾向からみて取れる。以上のことを踏まえると、地域の政策課題を解決していくよう、自治会運営を見直すためには、なるべく運営内部のメンバーを異世代にし、役員を固定化させないことや、新来住民の人々が活動しやすいようにする必要がある。また、時間を工夫するなど、担い手の不足に応じて、地域で活動する別組織(背景の異なるNPOや他組織)と協働することも考えた方が良いかもしれない。すなわち、風通しのよい組織の中で、まとまりの良さを捉え直す必要があるだろう。そこで、橋渡し型社会関係資本を組織の運営内部/外部に醸成することで、次のような新来住民と世代間表2 ジョイント・ディスプレイ-葛飾区新小岩自治会の運営状況特 集社会科学におけるデータ分析

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