cuc_V&V_第53号
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3453自治会・運営の課題のうち、「運営の負担コスト」には「14.活動の曜日や時間が参加しにくい」、「15.組織運営・役割分担が上手くいっていない」を、「活動内容の工夫」には「9.活動内容が世の中の変化に応じて変わっている」ことへの意識を利用した。仮説1が支持されるならば、橋渡し型社会関係資本、運営の負担コスト、活動内容の工夫の間にはポジティブな関係(+)が確認されるはずである。加えて、仮説2を確かめるために、組織の「風通しのよさ」に関する変数は「12.活動に若い世代や新規の人(外部の人)が参加しやすい」の意識を利用した。橋渡し型社会関係資本の正の外部性が支持されるならば、両者の変数にはポジティブな関係(+)が支持されるだろう。そこで、筆者は「社会関係資本」と「運営の負担」に関する変数を潜在変数に、それ以外の変数を観察変数に設定して、「社会関係資本」と組織の「風通しのよさ」、「運営の負担」、「(自治会の)必要性」の関係を推し量るパス解析を実施した。パス解析の結果から得られた標準化係数をもとに、ポジティブな影響((+)と表記)とネガティブな影響((-)と表記)を要約した図6から次のことがいえる。「活動参加(異質性:多世代、様々な世代の参加状況)」から3変数を説明する因子は組織の運営内/外の橋渡し型社会関係資本(図中は橋渡し型SCと表記)、「活動参加(同質性:同世代、ほぼ同じ世代の参加)」と「つきあい:役員メンバー固定化」を説明する因子は結束型社会関係資本(図中は結束型SCと表記)である。アンケートの調査結果からは、それらの共分散はポジティブに密接に関連している。分析の結果によれば、橋渡し型社会関係資本は「活動が世の中の変化に対応している」という意識とポジティブに結びついて、自治会の「必要性」意識を高める。よって、仮説1に挙げたように、「活動内容の工夫」に対しては橋渡し型社会関係資本を組織の運営内部と外部に築き上げる必要があろう。また、「若年層や新来住民が参加しやすい」という意識と正に関係し、仮説2に挙げた「風通しのよさ」への正の効果を支持している。一方で、必ずしも「運営の負担」に対し、「5.あてはまらない」方の意見が増えるわけではない。これは運営内部の活動主体の間で約束される独自のルールを一貫させることが難しくなってしまうからかもしれない。しかしながら、運営内部の役員が固定化し、同世代の住民のみが活動することで結束型社会関係資本が過度に醸成されると、「運営の負担」を増やしてしまう(1.あてはまるという意見が増える)ため、その方が望ましくない可能性がある。但し、自治会の必要性にはポジティブな影響を与えており、運営に必要なリソースであることは否定されるわけではない。つまり、橋渡し型社会関係資本と上手く両立させるしくみが必図6 ソーシャル・キャピタルと風通しの良い自治会・町内会の関係特 集社会科学におけるデータ分析

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