cuc_V&V_第53号
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3553おり、役員外の住民との活動意識にズレが生じている。このような風通しの悪い状況では、コロナ禍の不信がさらなる橋渡し型社会関係資本の醸成を停滞させてしまう。それは長期的視点で考えてみると、外部の手助けを得ることが難しく、内輪の論理が先行してしまい、さらに新来住民からの理解を得られないまま、担い手不足が長期化してしまうことが懸念される。それゆえに、長期的視野に立った持続的な地域社会運営には組織外の住民と他組織を巻き込んだ橋渡し型社会関係資本の醸成を視野に入れて、地域社会の効率性を改善させるまちづくりの方法を検討していく必要があるだろう。以上より、社会関係資本が社会にとって良い方向に機能するためには、地域社会の構造分析が欠かせない。そのため、機能と構造の両側面に対して同時にアプローチ可能な混合研究法は社会関係資本研究に有用な研究手法の一つではないだろうか。要なのではないだろうか。この点についてはより詳細な検討が必要である。結び-ソーシャル・キャピタルのバランスを考える4ポスト・コロナ時代を見据えて、自治会・町内会の組織運営をもとにして地域社会運営を持続的に運用可能にさせるには、どのような社会関係資本を醸成していくことが必要なのであろうか。コロナ禍の社会変化を受けた直後の地域社会では現在、短期的にみると住民と役員内外の結束型社会関係資本を活用することで、団体リーダーの運営意識を停滞させることなく、団体メンバーの創意工夫も喚起することができ、活動を継続しえる糸口や方策を考えていくことができるだろう。しかし、コロナ禍以前から担い手不足は散見されてクラヴトリー B.F./抱井尚子/亀井智子(2021)「混合研究法をめぐる議論からみえてくるもの(1)」、抱井尚子・成田慶一編『混合研究法への誘い-質的・量的研究を統合する新しい実践研究アプローチ』日本混合研究法学会、pp.106-113。クレスウェル J.W.(2021)「社会科学から健康科学へ混合研究法が拡張するにつれて」、抱井尚子・成田慶一編『混合研究法への誘い-質的・量的研究を統合する新しい実践研究アプローチ』日本混合研究法学会、pp.94-105。Coleman, J. S.(1990)Foundations of Social Theory, Harvard University Press.稲葉光行(2021)「探索的順次デザイン論文のトレジャーハント」、抱井尚子編『混合研究法の手引き-トレジャーハントで学ぶ研究デザインから論文の書き方まで』遠見書房、pp.39-52。稲葉陽二(2005)「ソーシャル・キャピタルの政策的含意―心の外部性とどう向き合うか―」、『計画行政』日本計画行政学会、85巻、4号、pp.17-22。稲葉陽二(2011)『ソーシャル・キャピタル入門』中公新書。稲葉陽二編(2021)『ソーシャル・キャピタルからみた人間関係―社会関係資本の光と影 生存科学叢書』日本評論社。ジョンソン R.B./フェターズ M.D.(2016)「混合研究法―「古くて新しい」研究アプローチ」、抱井尚子・成田慶一編『混合研究法への誘い―質的・量的研究を統合する新しい実践研究アプローチ』日本混合研究法学会、pp.5-13。ジョンソン・R.B(2021)「混合研究法を用いた包摂的科学への移行」、抱井尚子・成田慶一編『混合研究法への誘い-質的・量的研究を統合する新しい実践研究アプローチ』日本混合研究法学会、pp.76-84。亀井智子(2021)「看護における混合研究の活用例」、抱井尚子・成田慶一編『混合研究法への誘い-質的・量的研究を統合する新しい実践研究アプローチ』日本混合研究法学会、pp.67-75。河村洋子(2021)「説明的順次デザイン論文のトレジャーハント」、マイク・フェターズ/抱井尚子編『混合研究法の手引き-トレジャーハントで学ぶ研究デザインから論文の書き方まで』遠見書房、pp.28-38。小山弘美研究室編(2020a)『自治会活動参加状況調査―葛飾区新小岩第四自治会を事例として―報告書』関東学院大学社会学部小山弘美研究室。小山弘美研究室編(2020b)『葛飾区自治会活動調査―新小岩第四自治会を事例として-2019年度「社会調査演習c」報告書』関東学院大学社会学部小山弘美研究室。Mertens, D. M. (2003)Mixed Methods and the Politics of Human Research: The Transformative- Emancipatory Perspective. In A. Tashakkori & C. Teddlie (Eds.), Handbook of mixed methods in social and behavioral research, pp.135-166, Thousand Oaks, CA:Sage.野村一貴(2020)「新小岩地区の概況―新小岩地区の人口構造」、小山弘美研究室編『自治会活動参加状況調査―葛飾区新小岩第四自治会を事例として―報告書』関東学院大学社会学部小山弘美研究室、pp.3-15。辻中豊・和嶋克洋・戸川和成(2019)「地域における市民社会アクターの変化と踊り場にある都市ガバナンス-JIGS調査(1997-2017)に基づく推移と現状-」、公益財団法人日本都市センター編『都市とガバナンス』、Vol.32、pp.30-43。テッドリー C./タシャコリ A.編(2017)『混合研究法の基礎―社会・行動科学の量的・質的アプローチの統合』西村書店。戸川和成(2021a)「風通しのよい自治会運営は橋渡し型社会関係資本を構築することによって可能か」、稲葉陽二編『ソーシャル・キャピタルからみた人間関係―社会関係資本の光と影 生存科学叢書』日本評論社、pp.103-123。戸川和成(2021b)「首都・東京の社会関係資本と世代間継承、都市ガバナンスに関する予備的考察-「地域を紡ぐ市民の信頼、社会参加、暮らしの政策に関する調査」をもとに-」、『千葉商大論叢』、第58巻、第3号、pp.71-104。戸川和成(2021c)「コロナ禍では市民活動をどのように支援できるか-千葉県鎌ヶ谷市新型コロナウイルス感染症に関する影響調査に基づく知見-」、『千葉商大論叢』、第59巻、第2号、pp.273-297。参考文献特 集社会科学におけるデータ分析

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