cuc_V&V_第53号
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3953トピックス「三河屋菓子舗きおくうた」全文それまで働いてたのは デパートだった嫁いだ先は 和菓子屋でした仕込みは二時から はじめます黒あん 白あん かしわにさくら練り切りこねて お花を咲かす休みなんて なかったですお菓子も暮らしも そんなに甘くは ありません風邪をひいてた あのころよりも いまのほうが 元気だけれどこの街も ほんとに人が 減っちゃって嫁いでからはご苦労ばっかりですよ ふふ ふふふ五十年守ってきた店は 今日も笑顔で営業中手づくりに こだわりますそれしか私たちには できないのだもの農家の人の団らんに 結婚式の菓子折りに地元のひとから 愛された味は いまでも変わらない亡くなった夫と ふたりでつくった 思い出の味がする「お客さん来たよ」 呼びに来たのは 幼稚園のとき小さいころから店番の 娘もいまでは 立派な職人「それが 自然なことだったから」と 娘は笑う下の孫が さいきんね 学校の作文で 「お菓子屋さんになる」って 書いてくれましたこんなに暇だから それまでもつかはわからないよ笑って 応えたけれど甘いだけじゃない お菓子屋さん居心地のいい作業場から 届けます思い出とあんこの詰まった 和菓子たち「三河屋菓子舗のれん」

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