cuc_V&V_第53号
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4253トピックス「こがねや菓子舗きおくうた」全文長男は つらい兄弟が 八人いれば なおさらだ親父は言った  「在庫のいらない商売がいいぞ」だからはじめた 和菓子店はじめるまでの 長い道のり中学を出て 十五歳十年間 東京で修行した日本橋の名店でも 働いた最初のうちは かまどの煤とり 犬の散歩大したことは させてもらえない見よう見まねで メモとって あんこをもらって 部屋で練習師匠のもとで 初めてあんこに 触れたとき褒められたとき それはそれは うれしかったよ実家に戻って この店だしたらここでは菓子折りが はやってた東京で習わなかった 技術磨いて冠婚葬祭の引き出もの ひたすら作ったね祭りがあったら 酒屋さん式があったら うちの出番この街は 適材適所でまわっていたのさ運命ともにする 同志ほしくて商店会立ち上げた あのころ自分たちががんばらないと 街の未来は守れなかった時代とともに お菓子も変わる型抜きの菓子は いまじゃはやらない新商品の開発には 熱心です旅先で 必ず現地の甘味を買うくらいそうして生まれた いちご大福 コーヒー大福皮やあんこのバランスと 色にもこだわる 逸品ですお菓子は目で食べ 舌で味わう ものだから時代とともに 考え方も変わる何がいいかは 俺には もうわからない俺たちの時代は ケータイなんか なかったもの俺の考えは もう古いね年寄りが出しゃばるのは よくないね見えないところで 見守っているよ時代の流れに 寄りそいながら俺は一生 修行中「こがねや菓子舗のれん」

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