cuc_V&V_第54号
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9発芽した古代ハス写真9砂の運び込み作業写真10【自然の池岸再生】3.4 小学生の総合学習支援して水路の拡張・整備を行った後、ゼミナールでは石の撤去など細かい作業を手伝った。水路整備後、池水の滞留時間は短縮して、水の透明度が上昇した。すると日射が池底に届くようになったためか底泥から絶滅危惧Ⅱ類のデンジソウ、準絶滅危惧種であるイチョウウキゴケ、アサザのほか、古代ハスなど複数の水草の再生が認められた。その中で古代ハスが問題となった(写真9)。市民の会の記憶によるとじゅん菜池の古代ハスは過去に人為的に導入された外来種である。生態系の復元を目指す市民の会としては駆除すべきとの意見であった。しかし、その美しい花は一般市民を楽しませ、古代ハス保全の要望が寄せられたため、現在、市民の会では古代ハスの一部を保全して過繁殖とならないか様子を見ている。このできごとは、学生たちが外来種の駆除と希少種の保全ついて考えるきっかけとなった。現在4年生となった数人の学生は卒業論文の課題として多大な費用をかけての希少種の保全と大きな害の無い外来種駆除の意義に関して調査をおこなっている。実際に自らが池で体験した事象から課題を発見し、その解決に努めていることになり、池での学びの成果の一つと考えている。自然の池では岸から沖に向かい徐々に水深が深くなるため、水深に適した植物が遷移しながら自生する。たとえば、浅い岸近くではアシやガマ等の抽水植物、少し沖にはヒツジグサやヒシなどの浮葉植物、そしてさらに水深が深くなると浮遊植物や沈水植物(角野、2014)などである。じゅん菜池では過去に池岸を人工的な鉛直板で囲んだため、水深が徐々に深くなるような自然の池岸が存在しない。池岸の地形を元の緩やかな傾斜に戻し、自然の植生を移植して再生することを目的とし、プロジェクトでは自然の池岸再生作業をおこなっている。市民の会が企画、市川市が材料となる山砂を提供し、学生がその砂を池岸に運び込み池岸を形成するという3者の協働作業である(写真10)。学生にとっては単純な力仕事で現時点ではまだ作業途中で明確な効果はないが、市民の会が移植用植物の育成及び移植試行を行っており、学生たちは意義を理解して今後を楽しみに作業をおこなっている。 2022年1月に市民の会を通して市川市国府台小学校から声をかけていただき、4年生の総合学習支援をおこなった。具体的には池において小学生数名に学生2名がつきながら池の自然環境を学ぶ野外実習である(写真11)。実習に先立ち、ゼミナール3年生が中心となり授業構成案を練り、配布資料を作成した。授業は短時間に効率よく池の環境を学び、体験してもらうことを目的とし、池の成り立ち、地形、歴史の説明のほか、水質測定と野鳥のカウントを学生と一緒におこなうこととした。小学生に楽しく興味を持ってもらうため、池の成り立ちの説明では池の地形「谷津」にまつわる伝説の話も加えるなど工夫を凝らした。また、水質測定では試薬等をもちいるため、扱いの注意を徹底すること、水鳥のカウントでは池周囲を歩くため迷

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