cuc_V&V_第54号
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10総合学習支援において、池脇で池の成り立ちについて説明する。参考文献角野康郎(2014)「日本の水草」、文一総合出版、p.326杉田文(2021)「市川市「じゅん菜池」の水環境―再生・保全に向けた基礎調査報告―」千葉商大紀要 第58巻第3号pp.35-49杉田文(2022)「市民協働による地下水調査とその活用」、学術の動向 27巻1号pp.56-60.市川市 「じゅんさい池緑地」https://www.city.ichikawa.lg.jp/gre04/1521000002.html(2022年7月参照)千葉県「手賀沼に係る湖沼水質保全計画(第8期)」https://www.pref.chiba.lg.jp/suiho/8ki/tega/documents/teganumanikakawarukosyousuisituhozennkeikakudai8ki.pdf (2022年7月参照)写真11市民から「経験知」を学ぶ写真12子等に気を付けることなど、実際の授業を想定して内容・注意点をまとめ、予行練習をおこない本番に臨んだ。授業資料はワークシートとして小学生が自分で測定した水質や水鳥のカウント結果を書き込めるようにしたほか、興味をもって見返してもらえるようにカラーで図を入れた。実際の授業は設定時間の関係で学年を超えて(2~4年生)ボランティアで参加可能なゼミ生による実施となった。小学生が関心をもって容易に理解するために、4年生までの学習により持つ知識を事前調査し、小学生が理解できる言葉での説明も準備し、学生にとってはコミュニケーションについて学ぶ良い機会となった。本事業は小学校の教頭先生が偶然池にいらして実現したもので、継続の予定がない。今後何らかの形で継続できる方法を模索しているところである。市川市、地域の市民団体および教育機関が協働して水環境の再生を目指す「じゅん菜池プロジェクト」に参加する水環境ゼミナールは昨年度、科学的調査(水質と水鳥調査)、外来種駆除、周辺整備と小学校の学習支援をおこなった。プロジェクトには「憩いの水辺創出」、「希少生物の生息域保全」、「湧水の復活」など、多様な活動目的をもつ、社会的立場も年代も異なる人々が参加している。大学が主となり実施している水質分析では池の環境を悪化させる栄養塩の供給源を明らかにするとともに、その状況を速報で市民に情報提供している。野鳥カウントは学生・教員全員が未経験であるため専門知識を有し、長年池の野鳥カウントをおこなってきた市民に指導を仰ぎながら試行を続けている。カウント結果は共有し、野鳥の状況を把握するほか、池水質への影響評価にも利用した。外来種(アメリカザリガニ)の捕獲と駆除も市民のこれまでの知見を共有していただきながら協働して行い、未だ十分ではないが一定の効果をあげている。今後、さらなる対策が必要であることがわかっている。以上のように池での作業のほとんどが市民や市との協働活動である。多様な人々と協働することにより学生は大学の講義では得ることがない池に係る知識や技術を、市民の「経験知」から多く習得することができている(写真12)。加えて、市民との協働作業では池に関する多様な価値観、考えの存在を知り、その中で自らが果たすべき役割を考えて実行しなければならず、プロアクティブに行動することを身に着けることができている。一方、小学生への学習支援では相手の立場や知識を考慮した説明をおこなうことが求められるなど、池の再生活動は学生にとって自ら考えて行動する多様な学びの場となっている。4まとめ

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