cuc_V&V_第54号
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11プロフィール千葉商科大学政策情報学部准教授、グラフィックデザイナー。京都芸術大学(旧:京都造形芸術大学)通信教育部大学院芸術研究科芸術環境専攻修了。2015年千葉商科大学政策情報学部着任。教員業務と並行してデザインワーク(劇場公演広報物等)にも従事。千葉商科大学政策情報学部 准教授吉羽 一之YOSHIHA Kazuyuki本報告では、筆者が担当しているグラフィックデザインを主としたゼミナール(以下、ゼミ)におけるデザイン教育について、実践的な活動事例の過程と成果を報告し、千葉商科大学政策情報学部の中でのデザインの学び方や今後の実践方法を考察したい。実社会におけるデザインワークは全体の方向性を決めるディレクターを筆頭に、プランナー、デザイナー、イラストレーター、フォトグラファーなど、それぞれの作業を、それぞれを専門としているスタッフが担当している。一方、学生のデザイン制作においては、細かく役割を分担したいと考えていても、各役割に関心を持つ学生が揃うことは少なく、全ての役割を自身で担当しなければならないことが多い。しかし、筆者はそのことが逆に現場で働く際に、必要なスキルを身につける上で重要だと考えている。関心のある役割でないとしても、現場ではその役割を担うスタッフとやり取りをすることになり、自身がその役割の難しさを経験しているか否かで他の役割への理解度に違いが現れることになる。現場のデザイナーは情報を目に見える形にすることだけに専念しているのではなく、ディレクターやプランナー、その他のスタッフの意図を汲むなど、プロジェクト全体を把握し、それらを踏まえてデザインを構成することが求められる。デザインの仕事は、一言で言えば、任意の情報を目に見える、もしくは触れることのできる形にすることである。時としてそのプロセスを含め、デザインと称する場合もある。デザインの仕事の過程として、まずは任意の情報の中からテーマを見つけることが出発点となる。テーマは、情報を最終的に誰にどのような形で発信するのかを踏まえ、対象となる情報を観察することで見つけ出すことができる。続いて、設定されたテーマをターゲットにどうすれば伝わりやすいものになるか、その方向性や伝達方法、表現手法といったコンセプトを設定する。テーマを表現するためのコンセプトが設定できれば、それらを踏まえ、情報をモノへと作り上げ、最終的な成果が形となる。前項のデザインワークを踏まえ、筆者が専門としているグラフィックデザイン(紙メディアを主とした情報の視覚化)に絞り、その過程を順序立てるとすれば、まずはテーマを見出し、ターゲットや、ターゲットに対する最適な伝達方法を踏まえたコンセプトを設定する。設定されたコンセプトに従い、用紙サイズや加工、用紙の質、その上に配置する文字情報を表記するための書体や図版(写真やイラスト)などを選定し、写真はフォトグラファーに、イラストはイラストレーター1はじめに2.1デザインワークの過程2.2グラフィックデザインの制作過程政策情報学におけるデザインの学び方デザイン教育における活動事例報告

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